発達障害の子どもとの生活は波が激しいので、問題のない状態、いわゆる「普通」のことも多々あるんです。そうすると、親からすれば「やっぱりうちの子は健常だ」と思いたくなる。

発達障害の知識があるかないかで対応が全く異なる

――赤平さんは、「うちの子はいつか健常になる」という希望はないですか。

赤平 僕は勉強した結果、発達障害は多様な個性の中のひとつと捉える「ニューロダイバーシティ」という考え方に共感しています。ですので、そもそも「健常になる」という考え方をしたことがありません。「発達障害を治す」という考えも当てはまらず、発達障害をLGBTQに近い概念で捉えています。

 その上で、やっぱり発達障害の知識があるかないかで、対応が全く異なるんですよね。発達障害は「怒られの天才」と言われますが、怒られるのは前提とした中で、いかにそれを挽回させるかということを意識してコミュニケーションをしています。

 あと、勘違いされやすいのですが、発達障害の人は暴力的になりがちだったり、ヒステリックになりやすいと言われることがありますが、それは、「発達障害だから」ではないんですよ。

 

――どういうことでしょうか?

赤平 専門的な話になりますが、「二次障害」というものがあります。ものすごく簡略化してお話しするので言葉足らずで誤解されてしまうかもしれませんが、発達障害の人が、小さい時から怒られ続けて自己肯定感を徹底的に叩きのめされた結果、「自分はダメな人間だ」と落ちていくと、鬱になる。逆に、「俺は悪くない。社会がおかしい」となると、反抗挑戦性障害になりやすく、挑発的になってしまう。

息子へのいじめを止めるため、積極的に学校に関与

――発達障害であることと、問題行動は別の話ということですね。

赤平 「発達障害だから危ないよね」と思われがちですが、そこはイコールではなくて、環境がすべてではないかなと思っています。世界の多くの専門家が、発達障害当事者を改善せよ、ということより、社会の認識を高めて、いかにダイバーシティを実現するか、それしか道がないと主張しているんです。

2023.12.03(日)
文=小泉なつみ