当時は法律の施行から10年も経っていたのに、現場の方のアンケートを見ても、発達障害のある子どもに適切な支援ができないばかりにクラス崩壊を起こしている、という悲鳴が散見されました。

――せっかくできた法律が、現場では活きていなかった?

赤平 データ上は、ほとんどの教員が研修を受けていることになっていましたが、実際は先生が忙しすぎるがゆえに、代表の数人だけが参加して、その先生から同僚に伝えることで多くの教員が、記録上では「受講済み」となっていたようです。

 

 そのしわ寄せを受けるのは、子どもはもちろん、矢面に立っている先生たちも、知識がないから苦しいわけです。これは誰も得しない制度なんじゃないかと思い、文科省に要請に行ったり、ロビイングもするようになりました。

“健常の世界”での無理解に保護者はジレンマ

――発達障害で大変な思いをしている家族は多いかと思いますが、自分の子どものことで声を上げるのはむずかしいと感じますか。

赤平 学校などの教育機関側に要請をするのも、保護者は怖いと思います。環境が整っていないところほど、訴えがどのように評価されるかわからないでしょうし、親からすれば、ある意味、子どもが人質にとられているようなものですから。

 あと、そもそも子どもの発達障害をカミングアウトしたくない親は多いんですよ。

――赤平さんとは真逆のスタンスの方が多い?

赤平 発達障害に限らず「できることなら自分の子どもは健常の世界で生きてほしい」と考えるのが、すべての親の共通の考えではないかと思います。

――赤平さんのお子さんは周囲の理解不足もあって、“健常の世界”でいじめに遭いました。隠すことで、社会にとってその子の特性が伝わらないこともあるように感じます。

赤平 だから保護者はジレンマなんです。「子どもの状態がいつか良くなって社会に適応できるようになるのではないか」という希望もあるけど、目の前にはトラブルが山積していて。

2023.12.03(日)
文=小泉なつみ