そういった意味で、僕は息子へのいじめを止めるために積極的に学校に関与しました。いわゆる、環境調整ですね。

カミングアウトしたほうが楽になる

――具体的にはどんなことをされたのでしょうか。

赤平 例えば、小学校の時は毎日息子を学校まで送り迎えしていました。その際、学校の子たちに「おはよう」「さようなら」「今日何したの?」と6年間、声をかけ続けました。多くの学校や地域で取り入れている「見守り活動」を毎日勝手にやっていたんです。すると、「あれは赤平の父ちゃん」という認識が子どもの中で高まります。知っている人の子どもはいじめにくいですから、いじめもだんだんなくなりました。他のお子さんも私が日々付きそうことで、「あの子は何かあるんだ」と大きくなるにつれて理解します。

 なので、カミングアウトしたほうが楽になると僕は思っているんです。ただ、それができないのもわかります。やっぱりまだまだ社会的な認知は高くないし、障害者というレッテルで生きなきゃならないのは辛いのでしょう。

 でも、無理やり健常者として生きた結果、二次障害になって、会社に適応できず退職してしまう人も少なくありません。大人になっても発達障害の自分を理解してもらえない辛さは息子にとっての将来のリスクなので、減らしたいですよね。

 

動画サイトで発達障害に関する支援方法や情報を発信することに

――現在、発達障害・ギフテッドに特化した動画メディアも立ち上げられています。

赤平 先ほどロビイングをしたと言いましたけど、一昨年、文科省の担当者に申し入れをした際、彼らも現状の歪みを理解していて、「厚労省と文科省にまたがったプロジェクトチームを作ったばかりです」と話していました。その時、ああ、これではうちの子は救われないと確信したんです。2省にまたがると、物事を決めるスピードが遅くなりますから。

 もうこれは自分がやるしかないと思い、発達障害に関する支援方法や情報を発信する「インクルボックス」という動画サイトを立ち上げて、活動をはじめたんです。親だけじゃなく、先生も、企業も、知識を持つだけで意思決定が全然、違うものになりますから。結果的にこの「インクルボックス」が息子の麻布中学受験に役立つとは、当時は全く想像していませんでした。と言いながら、僕も反省ばっかりなんですけどね。

2023.12.03(日)
文=小泉なつみ