大河ドラマ「江」の蘭丸役で得たもの
――そんな目まぐるしい1年間で学んだことは何だったのでしょうか?
その前に何本かドラマをやらせていただいたこともあって、この業界のルールみたいなものはある程度分かっていたんです。でも、まだまだ新人なので、各シーンで監督が何を撮りたいのかみたいなことは、100%理解できていなかったですね。あの1年はスケジュールもハードだったので、状況に身を任せるような感じだったと思います。
とはいえ、二十歳そこそこで、いわゆる職人と呼ばれるベテランの監督さんやスタッフさんに囲まれて、一緒に仕事させてもらったということだけでも、いろいろ勉強になっていたと思います。
――その後、俳優として大きな変化を与えたきっかけとなった作品はありますか?
僕の気持ち的には徐々に変化していったと思っているので、正直よく分からないです。映像の仕事を中心にやりながら、合間に舞台をやっていくことで、お芝居とは人と人とのキャッチボールで、自分が前に出過ぎてはいけないということを学んでいきました。たとえば、どう自分がカメラに撮られているのか? どの程度の寄りなのか? このカットで伝えたいことは何なのか? 舞台だったら、どうお客さんに見られているのか? そういった把握能力みたいなものも、徐々に分かってきたような気がします。とにかくいろんな現場で揉まれていくことで、いつの間にか見えてきた。だから、どの作品も自分の成長過程にある作品です。
――それでは、大きな影響を受けた共演者の方はいましたか?
大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」(2011)で共演させていただいた豊川悦司さんです。信長と蘭丸の関係を演じさせていただいたんですけど、セリフがないシーンでの空気のぶつかり合いをスゴく肌で感じることができました。蘭丸役に抜擢されたときにプレッシャーがあって、いろいろ考えたんですよ。特に蘭丸って、どんな男だったのかと……。世間では美形のイメージがあるけれど、小姓という低い階級だったにしろ、今の時代に男の中の男と呼ばれる人よりも男らしかったと思うし、十代で自分の使命を理解して、貫いた姿勢を強く出したいと考えて、監督に提案してみたんです。そういう演技に取り組む姿勢も、「キバ」のときに比べると大きく成長していたかなと思います。子供の頃は、引っ込み思案な性格で、人とのコミュニケーションがスゴく苦手だったんですよ。それが今では積極的に話しかけたり、知らない場にも入っていけるようになりました。
2014.01.26(日)
text:Hibiki Kurei
photographs:Asami Enomoto
hair & make-up:Junko Kobayashi
styling:Yojiro Kobayashi(Yolken)