LDHの試行錯誤
女性を喜ばせる職業である、ホストやデート・セラピストの世界を描いた作品では、男性たちは結局、女性を裏切る存在であると描かれる作品のほうが現時点では多い。それは、悪質ホストによる売掛金問題がニュースになる昨今においては、リアリティを描いているので警告にもなるし、そういう作品が作られることにも意義があると思う。こうした作品にもまた、主演三人が所属するLDHのアーティストはよく出ているのである。
(※ドラマイズム「明日、私は誰かのカノジョ」には『MY (K)NIGHT マイ・ナイト』の主演三人と同じTHE RAMPAGEの藤原樹がホスト役で、ドラマ特区「サブスク不倫」にはFANTASTICSの堀夏喜がサブスク不倫サービスの不倫相手として出演している)
しかし、『MY (K)NIGHT』は、いきつくところまでいきついた男性のミソジニーを、一回全部とっぱらった世界での一夜を描いているのが斬新なところであり、この映画を見た多くの女性が、甘いシーンはないのに胸をうたれるのもそれが理由だろう。ミソジニーのない男性キャラクターが紡ぐ物語は、ストレスがないだけでなく、こんなにも癒されるものなのだと、この映画を見て思わされた。
しかも、デート・セラピストたちは別に女性たちと愛を誓ったりもしないし、一夜を共にした女性を未来永劫守る存在になったりもしない。これは一夜限りのお金を介したサービスであるときっちり描いてもいる。言ってみれば、ドライな物語でもあるのに、物語の中にいる女性たちにも、観客にも、この関係性をドライだと感じる人はいないのではないだろうか。
ただ、LDHの数々の映画から、このような境地の作品が生まれるまでには、さまざまな試行錯誤があったと思う。例えば、初期の『HiGH&LOW』シリーズでは、男性ばかりが活躍していて、女性のキャラクターの活躍や主要人物との関係性が弱いという指摘が多かった。しかし、そのような部分に関しても模索を続け、宝塚で上演された『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』では、女性キャラクターの可能性を感じることができた。
「有害な男らしさ」については、どこまで計算されたものかはわからないが、LDHのアーティストたちが「王子のナンバー1を競う」という『PRINCE OF LEGEND』シリーズでも考えさせられるものがあったし、『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也がメガホンを取り、GENERATIONSの片寄涼太が主演を務めた短編『COYOTE』では、「有害な男らしさ」とは何かという主題に真っ向から向き合っていたと思う。
これらのLDHが携わる映画について、今後も考えていきたい。
2023.12.01(金)
文=西森路代