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 現代の女子高生・百合が目を覚ますと、そこは1945年の日本。そこで出会った彰に助けられ、どんどん惹かれていくが、彰は特攻隊員で、ほどなく戦地に飛ぶ運命だった―。SNSで話題となり、若者を中心に人気となった汐見夏衛によるベストセラー小説『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の実写映画化で、主人公の彰を演じた水上恒司さんは、初舞台も特攻隊員役だったといいます。水上さんに、今回の役どころについてお聞きしました。

高校での初舞台以来、2度目の特攻隊員役を演じて

――水上さんは、初舞台となる全国高等学校演劇大会において、原爆投下直前の長崎を舞台にした『髪を梳かす八月』で特攻隊員役を演じました。今作『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』でも特攻隊員の佐久間彰を演じています。原点回帰ともいえる今作へのご出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

 「特攻隊員」という役を再び演じさせてもらうことに対しては、ご縁を感じましたね。僕は昭和を知らないのに、なぜか「昭和が似合う」と言われることが多いので、昭和っぽいと評されることの多い、熱くもえたぎる魂みたいなものが僕の中にもあるのかもしれないなと自分を分析して思いました。

 僕は野球をするために長崎の高校に通っていたんですけど、被爆地である長崎では戦争について学ぶ機会が多かったんです。それに加えて、僕は広島に親戚もいるので、「自分は被爆地に縁がある」という意識が強くあって、風化させてはいけないという思いは常に抱いていたように感じています。

 そういう意味では、この作品に関わらせてもらうことで、僕よりもさらに若い世代に、こういう史実があったんだよということを伝えるきっかけが作れたらいいなということは思いました。

――2回目となる「特攻隊員」を演じるために役作りで意識されたことを教えてください。

 前回も今回も、実際に出撃した方の遺書を読んだり、特攻隊員に任命されながら出撃を免れた方の手記を読んだりは、もちろん、しました。僕なんかが簡単に語れるものではないと思うので、ちょっと言葉にするのは難しいのですが、あらためて本当に大変な時代だったんだなと思いを馳せながら演技をしました。

2023.12.04(月)
取材・文=相澤洋美
写真=榎本麻美