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戦争へのネガティブな思いは、逆にブレーキに

――今作は、日本のために死ぬことが「愛国心」とされていた時代の物語です。特攻隊員を再び演じるにあたり、思いや理解などに変化はありましたか?

 時代背景も状況もまったく違うので、見当違いな発言になってしまうかもしれませんが、前回も今回も同じように僕には想像しがたい世界だなと感じました。

 「日本に生まれてよかったな」と思うことはたくさんありますが、だからといって「国のために自分が死のう」とはどうしても思えないんですよね。だから「家族のため」とか、さらに家族のなかでもこの人を守るため、みたいに具体的にイメージを膨らませていく中で、そこに福原遥さん演じる百合への思いも重ねて、気持ちを乗せていきました。

――今作は、戦争の悲劇をテーマに置きつつも、メイン軸は百合と彰のラブストーリーです。どのような点を重視されましたか?

 実は今作では、僕がはじめて芝居に触れた役が特攻隊員だったことや、親戚、高校など被爆地と縁が深いことに関する「戦争に対する思い」みたいなものを邪魔に感じました。というのも、今作では戦争の悲惨さや残酷さは描きつつも、メインは百合と彰のラブストーリーなんです。だから、あえて戦争の残酷な部分や汚い部分みたいなものは描かれていません。そういう作品の中で、僕が抱えている戦争へのネガティブな思いは、逆にブレーキになった部分があった気がします。自分の戦争への思いと、現場で求められることへのギャップというか、折り合いみたいなところが、ちょっと苦しかったところです。

AIロボットか妖怪のようなイメージを抱いた

――戦争の残酷さや悲惨さではなく、ラブストーリーをより意識して表現されたということでしょうか?

 そうですね。演じたのは「特攻隊員」ですが、抑えても抑えても百合への思いがあふれてくる若者として、彰を演じた部分は大きかったように思います。

 百合に出会うまで、彰にとって特攻隊員で出撃することは、名誉であり、自らの望みでもあったと思うんです。自分が「特攻兵」であることに何の疑問もなくて、むしろ「行かなければいけない」という潔さみたいな部分しかなかった。たとえ魔が差して泣き言を言いたくなる場面があっても、「そんなこと思っちゃダメだ」と自分を封じてしまう。彰は、そんな人間だったはずなんです。

 ところが百合に出会ってしまい、胸の奥で百合と一緒に生きていきたいという思いが生まれてしまう。そんな、決して両立はできない「特攻」と「恋愛」のバランスを意識することで、より戦争の悲惨さも伝えられたのではないかと、自分では思っています。

――作品の中で、特攻隊員のことを「神様」と呼ぶシーンがありました。「神様」と呼ばれる特攻隊員を演技で表現したところはありますか?

 「神様」と言われるための役作りはしていませんが、僕の中で彰に対して、感情を完全にコントロールできるAIロボットか妖怪みたいなイメージがあったので、そのロボット的な結果として、神様に見えたらいいなと思って彰像をつくっていきました。具体的には、人間らしい弱さやもろさを極力見せないように、ちょっとミステリアスで達観した人物を演じました。

2023.12.04(月)
取材・文=相澤洋美
写真=榎本麻美