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この映画を観たら、僕らと一緒に曲を作ってる気分になる

──3人の今を記録したい、みたいな思いもありましたか?

岸田 円グラフで言うと、そんなに大きなパーセンテージじゃないですけど(笑)、多少はね、もちろん。記録映像としてありがたいなというのはあります。

佐藤 僕も岸田さんが言ってたような、ヒリヒリするようなバンドもんのドキュメンタリーがちょっと苦手なんです。『Get Back』(ザ・ビートルズのドキュメンタリー映画)観るのに1ヶ月かかったんで(笑)。でも、佐渡さんにくるりの曲が生まれるところを撮ってもらえるなら、きっとそういう映画にはならないんだろうなって。

 『NO SMOKING』を観た時に、映画だけど、自分的には細野さんの音楽を聴いてるような気分でしかないというか。この『くるりのえいが』もくるりの曲を聴いてるような感覚で観てもらえる映画になったと思ってるので……(佐渡さんに向けてお辞儀しながら)この場を借りて、本当にありがとうございました!(笑)

佐渡 いやいやいや! こちらこそ、ありがとうございました(笑)。

佐藤 実は、撮影が始まった時は「この映画の落としどころってなんだろう……?」って、やたら不安に思ってたんです。そんなのだけでいいのかなあ!? こっちがストーリーを作らないといけないのかな、とか(笑)。でも結果的にアルバムができたし、曲が誕生して、育って、皆様のところに届くっていうストーリーにしてくださったから。そんな心配しなくてよかったんだと思うんですけど、どういうものになってるかは、実際観るまで全然わからないじゃないですか。そのドキドキと楽しみっていうのは、存分に味わいました。

 僕も最初は「映画!? うわめっちゃ緊張しそうやな」と思ってたんですけど、やってくうちに、カメラがいるのが当たり前の状態になっていって。たぶん全然かっこつけてるところもないし、すごく自然な感じで撮っていただけたと思います。この映画を観る方も、きっと一緒になってアルバムを作ってるみたいな気持ちになるんじゃないかな。『感覚は道標』を聴くにしても、“参加してる感”みたいなものが、普通に聴くアルバムよりも増えるような気がするんですよね。そういうことってなかなかないし、面白いなと思います。

2023.10.12(木)
文=石橋果奈
写真=深野未季