桜木町駅に寄り添うように「川村屋」は続いていく

 初代横浜駅から始まり桜木町駅の焼失や改築・移転などが幾度とあっても、それらに寄り添うように「川村屋」は生き続けてきた。

「川村屋」は有限会社川村屋としてその屋号が引き継がれて現在に至っている。西欧レストランにあこがれて開業した初代やお倉の想いが、そばの味を高めていった6代目そして7代目へと引き継がれているようにも思える。創業123年の重みとでもいえばいいのだろう。

 また初代、5代目、そして7代目の愛子さんと女性のオーナーが3人いることも特筆すべきことである。「川村屋」は女性が活躍する場所なのだろう。「1000杯売れてもお客さまにとっては大切な1杯。そのことを忘れない」という6代目の言葉を7代目がどう花開かせるか楽しみである。

 関東大震災、さらに太平洋戦争などの廃業の危機を乗り越えて、コロナ禍以降もその屋号は生き続けている。そして平和の時代であるほどその輝きを増す。立ち食いそば屋は平和の時代の象徴だと思う。6代目そして7代目の想いが将来の「川村屋」を粛々と築いていく。今回の取材のまとめは次のような結論で終わりたいと思う。

「平和と桜木町駅繁栄の象徴……川村屋」

INFORMATION

川村屋
住所:神奈川県横浜市中区桜木町1丁目1番地 CIAL桜木町 停車場ビュッフェ
営業時間:月~土:7時30分~20時15分
     日・祝:8時30分~20時15分
​定休日:12月30日~1月3日

 

近代桜木町駅と「川村屋」の歴史(敬称略)

明治4(1871)年 斎藤くら(お倉)が駒形町(現真砂町)に料亭富貴楼を開業(料亭政治の舞台となる)

明治5(1872)年 横浜駅(現桜木町)が開業

明治31(1898)年 大船駅で大船軒が営業を開始

明治32(1899)年 大船駅の大船軒が日本で最初の駅弁サンドウィッチを発売

明治33(1900)年4月 お倉の働きかけで伊藤博文を介して渡井つる(1代目)名義で営業許可を得て横浜駅(現桜木町駅)に洋食レストラン「川村屋」を開業

2023.10.12(木)
文=坂崎仁紀