コロナ禍を経てアップデートを遂げた香港。実はアートも熱い! 毎回、日本からも多くのギャラリーが出展するアジア最大級のアートフェア「アートバーゼル香港」が、2013年からこの地で開催されていることが物語るように、いまやアートは香港観光の見どころのひとつになっています。
中でも最も注目すべきかつ訪れるべきなのが、2021年11月にオープンした美術館「M+」です。ミュージアムプラスを意味する施設名が体現するのは、20世紀の一般的な美術館の概念に21世紀らしい在り方をプラスした、新たな美術館。
バランスのとれたキュレーションを実現
欧米を中心とした西洋美術史を軸にキュレーションを行ってきたこれまでの美術館。21世紀に入るとその偏りに気づき、女性やアジア系、アフリカ系など、これまであまりフォーカスされてこなかった、多様なアーティストの作品の展示や収集に力を入れ始めました。そんな、新しい美術史のうねりの中で誕生した美術館が「M+」になります。
アジアのカルチャー史をわかりやすく紹介
ミッションは、これまでなかなか俯瞰されてこなかったアジアの美術、デザイン、建築の歴史を、学術的な観点だけでなく、一般の人々にもわかりやすいように紹介すること。国境を超えてコレクションやストーリーを作っているのが特徴です。
作品は香港、グレーターチャイナ、アジアをはじめ、世界各地から集められ、ビジュアルアート、デザイン、建築、動画などを網羅。アジア初の世界的なヴィジュアル・カルチャー美術館を謳います。
ヘルツォーク&ド・ムーロンの建築自体も見どころのひとつ
建物を手がけたのはヘルツォーク&ド・ムーロン。建築界のノーベル賞とも言われるプリツカー賞を2001年に受賞しているスイスの建築家ユニットで、日本では銀座の「UNIQLO TOKYO」の内外装や表参道の「プラダ 青山店」を設計したことでも知られています。
高層ビルの多い香港ですが「M+」は、平たい形をした本体の上に巨大な壁のようなタワーが聳え立つデザイン。タワーのファサード部分はLEDになっていて、デジタル作品を展示できます。
スタイリッシュでスケール感のある建物自体も「M+」の見どころのひとつなのです。
2023.10.09(月)
文・撮影=石川博也