千年の都、京都。貴重な文化財が点在し、歴史・芸術・文化・食の中心地として現在も日本らしさを牽引している都市です。そんな京都には、「花を供える」という人の根源的な行為を世界的な芸術にまで昇華させた、「いけばな」のルーツがあります。

 京都の中心地からほどちかくにある、聖徳太子によって創建されたと伝えられる六角堂(頂法寺)。六角堂の北側の、聖徳太子が身を清めたと伝えられる池のほとりに僧侶の住坊があり、「池坊」と呼ばれたそう。代々六角堂の住職を務める池坊が、仏前に花を供える中で技術を生み出し、伝え、室町時代の「いけばな」の成立に至ったとされています。

 現代の京都を巡ってみても、神社仏閣をはじめ、飲食店や土産物店など、至る所に花がいけてあるのを目にし、花を愛でるということが脈々と受け継がれているのを感じます。

 そんな花を愛でる京都の人々、そして世界中から訪れる観光客に花を届ける京都の花屋さんの中から、フラワーデザイナーの佐藤俊輔が、京都らしさあふれる美しい花屋さんを4店ご紹介します。


◆atelier Acor

 「毎日コーヒーを買うように花も買ってほしい」。そう話してくれたのは、フラワーショップ「atelier Acor(アトリエアコル)」を営む店長の福永さん。お店のファサードは、打ちっぱなしのコンクリートをベースに、ウッド素材やゴールド素材がちりばめられた、インダストリアルな雰囲気の中にも高級感が漂うつくりで、入店前から心が浮き立ちます。

 「性別や年齢を問わず花に興味を持ってもらいたい」という想いをこめて作られた店内には、ブルーグレーの壁紙をバックに色とりどりの花が丁寧に並べられ、花に興味がない人も惹きつけられてしまうであろう魅力にあふれています。

 奥には、ドライフラワーで縁取られた大きな姿見がディスプレイされ、そのドレッシーな雰囲気にテンションが上がる人も多いはず。

 気軽に花を楽しむなら、ショップ入り口の小窓からテイクアウト感覚で購入できる、コーヒーカップに入ったミニ花束がおすすめです。美しい店内の花々をギュッと凝縮したようなミニ花束は花瓶を使わずにそのまま飾ることができるので、自宅や仕事場、ホテルの自室など、お好みの場所で「atelier Acor」の世界観を楽しむことができます。

 コーヒーを買うように花が買える、まさに自分だけのお気に入りのカフェのような花屋さんです。

atelier Acor(アトリエアコル)

所在地 京都府京都市中京区海老屋町322 1F
電話番号 075-231-8880
営業時間 11:00~19:00
定休日 火曜
https://atelier-acor.com/

2023.10.05(木)
文=佐藤俊輔