この記事の連載
島根の気になる作り手たちの逸品を探しに。今日と明日で気になる2軒の手仕事工房・ショップをご紹介。今日は1870年創業の老舗「天野紺屋」。
山奥の城下町に受け継がれる藍染の美しい世界
◆天野紺屋[安来・広瀬町]
![染め上げられた後、天日干しされる糸。美しいモノづくりの風景は、ここにも息づいている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/5/1280wm/img_f5526228c917c7dcceab85c809da1652147644.jpg)
松江市街から車で約35分。鬱蒼とした山道を経て辿り着くのは、古い家並みが残る広瀬町。
松江城が築かれるまでの長きにわたり、月山富田城の城下町として栄え、山陰の中心だった場所である。
![5代目を継ぐ天野尚さん。趣味は誕生日占い。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/c/1280wm/img_fcfb458117d3b8a9cf2ba4db0939bd80119887.jpg)
その風情ある一角に小さな暖簾を掲げるのが1870年に創業の「天野紺屋」。かつてこの地は機織りが盛んで、その糸を染める紺屋も20数軒あったという。
だが、現存するのはこちらの一軒のみ。5代目・天野尚さんがその伝統を守り継ぐ。
![天野紺屋では、糸染めのほか、手ぬぐいなども手がけている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/1280wm/img_4fc05d1f2bd6f349c23eab6d2330053e187800.jpg)
「この町の“広瀬絣”は、久留米、伊予と並ぶ三大絣として広く知られました」と話す天野さん。
![オリジナル商品も販売。左から“がま口ポーチ” 4,400円、“チャック付きポーチ” 3,850円。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/6/1280wm/img_a606be3e086bbe9cf0b5983620165e17110876.jpg)
戦後、廃絶寸前となったのを祖父・圭さんが保存に努め、現在は尚さんが染めた糸を父・融さんが手織りし、希少な伝統工芸を伝えている。
![“管巻糸”きなり 385円~中紺 770円、“髪留め” 各990円。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/2/1280wm/img_f2365bea3a4d0069c1085e3e595ef521121222.jpg)
さて、特有の香りに包まれる染色工房。発酵した藍液から布を引き上げる。すると最初は緑色だが、酸素に触れて青く変化していく。
これを繰り返すことで深みが増し、吸い込まれるような美しい藍色が生まれるのだ。なお、洋服の藍染オーダーのほか、藍染体験(要予約)も可能。奥深い世界を堪能してみたい。
![丹念な手織りによって生まれる“広瀬絣”。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/5/1280wm/img_553ca15c49a5a61d939f11313d409dbd128017.jpg)
天野紺屋
所在地 島根県安来市広瀬町広瀬968
営業時間 10:00~18:00
定休日 不定休
交通 松江駅から車で約35分、足立美術館から徒歩約35分
https://www.amanokouya.com/(お問い合わせはウェブサイトから)
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.09.30(土)
文=矢野詔次郎
撮影=鈴木七絵
協力=島根県観光連盟
CREA Traveller 2023 vol.3
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。