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●プロが語る、電子書籍の楽しみ方は?

――最近は縦読みのマンガも増えましたよね。

荻野 増えましたね。横読みで描かれた漫画でも縦表示に切り替えて読めるアプリも増えてますし。やっぱりスマホだと縦スクロールの方が読みやすいんだろうなーと思いながら、私はスマホでもまだ横読みで読んでます(笑)。

すず木 私も横読み派ですね。

足立 僕も。横読みが染みついちゃってて、縦だと目が追えなかったり(笑)。

すず木 新卒とかの若い子は縦読みの方が読みやすいとか言ってて、え、そうなんだ! ってジェネレーションギャップを感じてます(笑)。自動でページをめくる機能を使う人も多いですよね。

足立 個人的にはページをめくる作業も含めてマンガを味わっているのですが、自動ページめくりは電子ならではですよね。これもマンガの進化の歴史ですね。

――フルカラーのマンガも増えましたし、作家さんにとって表現の自由度はかなり広がったのかもしれません。

すず木 作品が世に出るチャンスも昔に比べると格段に増えましたよね。それこそ、X(旧Twitter)で発表したマンガがバズって連載に繋がるというケースも増えてますし。

荻野 私は普段からXをよく見るので、そこで誰かがおすすめしてるマンガをチェックしてそのまま電子で読むみたいなことは、すごく増えた気がします。

――皆さんが感じている、電子マンガならではの楽しみ方はありますか?

荻野 旅行先でも、電子マンガが読めれば一気にホームになるのはいいですよね。せっかく旅行に来てるのにマンガを読むなよって感じなんですけど。

足立 いや、旅先で読むマンガは格別なものがありますよ。

荻野 出先で読めるのは大きいですよね。最近は美容院でも雑誌は断って、自分のスマホでマンガを読んでます(笑)。

すず木 私は読書タイムはお風呂の中なので、電子はすごくありがたいです。お風呂の中だと泣いても気にしなくていいので、ダーダー泣きながら読んで、すごくデトックスになってますね。

荻野 それ、めちゃくちゃ気持ちよさそうです! 

足立 個人的には電子マンガを読むようになってから、待ち時間が気にならなくなりました。ラーメン屋さんで行列するのも昔は抵抗あったけど、最近は読みたいマンガがあったからちょうどいいやって。

――スキマ時間が有効活用できるのも電子ならでは。荷物にならないのも大きいですよね。

荻野 大きいですね。電子だと自宅での収納も気にしなくていいし。先日、『ゴルゴ13』(さいとう・たかを/小学館)が55巻まで55円のキャンペーンをやってて、思わずまとめ買いしちゃいました。

足立 『ゴルゴ13』は200巻とかあるので、紙の本だと床が抜けちゃう(笑)。それだけのマンガが全部スマホに収まってるって、本当にすごいことです。

荻野 長編マンガは電子の方がいいですよね。実際、去年『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)の映画が公開された時、電子もかなり動きました。昔だったら絶版になっていたような過去の名作マンガも電子なら気軽に読めるんだなって、改めて気付かされました。

すず木 最近だと『うる星やつら』(高橋留美子/小学館)も再ブームで動きましたよね。電子は次世代への作品の継承にも一役買っているのかもしれません。

2023.09.09(土)
文=井口啓子
撮影=末永裕樹