これは当然賭けるべきときだったからですけれども、残念ながらこのナンバー2は3(スリー)以下に対する目配りが足りなかった。だから自分が浮き上っちゃうのね。やはり、ただ一回反乱を起こすとすれば“3”以下を全部自分の手の中に入れておかないと、チャンスは一回だけですからね。
城山 彼はそういうことが自分でわかっていなかったのですか。
永井 わかってなかったですね。
城山 とにかく信長を殺せばいいと。
永井 ええ。そこから先の展望を持っていなかったんです。しかも保守的でね。もう時代は変わって、お飾りでしかないのに、天皇とか公家にばかり気をつかっているわけ。やはり足利義昭に仕えていた体質的な古さがあるんですね。
城山 秀吉の持っている庶民性とか、下の人に対する目配り、気配りがないのですね。考え方が古いし、上に偏っている。
永井 そうですね。だから上の人を倒そうということしか考えない。ナンバー2は、やはり下に対するものすごい気配りが必要でしょう。
城山 小早川隆景もナンバー2ですね。秀吉も非常に買っていて、ほんとうにナンバー2としてほしかったのだが、先に死んでしまい、ガッカリしていますね。彼など、毛利家の中で吉川元春が死んでしまえばナンバー1になれますしね。そういうチャンスが再三あるんだけど、彼はそのような気持を持たないですね。
永井 私は周恩来って一番すごいと思う。ナンバー2のナンバー1じゃないですか。
城山 そうそう、ぼくもそう思う。
永井 あの人って、いつの時代にもすごい人気あるでしょう。私は文革のときしか中国に行っていないけれど、もう、周恩来の人気は絶対でしたね。
城山 文革中に行ったのですか。ぼくは文革後も行きましたけど、なお圧倒的でしたね。
永井 そうでしょう。それでいてしかも毛沢東に憎まれないんだから、立派ですね。
城山 小早川隆景なども、周恩来みたいになれる男だったでしょうね。
2023.08.30(水)