この記事の連載
アイスランドの至宝、国内最大の氷河湖へ
「アイスランドの至宝」と呼ばれるヨークルスアゥルロゥン湖。
ヴァトナヨークトル氷河が支流を作り、溶け出してできた国内最大の氷河湖だ。とにかく広く、18平方キロメートルあるそう。
氷河は自らの重みで山を削りながら流れてくる。末端は崩れ落ち湖を漂う。
分かれた氷河が湖に浮かぶ様は神秘的だ。
「ワーオ!」目の当たりにする氷塊にみな口が半開き。
「形は刻々と変わるから同じ氷塊はもう二度と見ることはできないわよ」。
ガイドが他のボートと連絡を取り合いながら今この瞬間の見どころを案内する。
不安定なボート内は見ること聞くこと、写真を撮ることと色々と集中力が要求される。乗り出して写真を撮ろうとするとガイドに叱られ、夫に首根っこを掴まれた。
火山灰が氷河の表面に降り積もり、やがて雪が氷となりまた埃が覆い幾重にも層を作る。長い年月が作り出す縞模様。
氷河はアイスランド国土の10%。ヴァトナヨークトル氷河は約2,500年前からでき始めたといわれ、氷河には千年モノもあるのだとか。
ここは氷河としては最後の姿が見られる終着点。温暖化で年ごとに氷河が溶け出してできる氷塊は増えているそうで、ガイドはもう氷河はこれ以上大きくならないんじゃないかと憂いていた。
氷や岩にアザラシが休憩しているのも珍しくない。ボートが近づくとびっくりする。
氷が青く見えるのは青以外の色を吸収するから。太陽にさらされて溶ける氷は青色が弱まっていくが、水中で空気に触れずに溶けた氷は湖面に顔を出すと青色が際立つ。
1時間ほどでツアー終了。遠くの氷河を見つめすぎて遠近感がなくなっている。
氷のかけらが輝くダイヤモンドビーチ
ボートを降り、湖の河口付近から流れる氷塊を追いかけながら海へと向かう。
目の前で音を立て氷が溶け崩れていくスピードは思ったより速い。
氷塊が溶けて海へ流れ出て黒い砂浜に打ち上げられる。流れ着いた氷のかけらたちは陽にあたりキラキラと輝く。その名も「ダイヤモンドビーチ」。
2月から3月頭までが氷塊が最も多く流れ着く時期らしい。その時期は日の出や夕日沈む絶景も見られるとか。白夜の今は難しいのだけれど
氷河の一生を見届けることができるなんてと感慨深い気持ちになる。しかし一方でそのサイクルが早まっていることも事実だ。そんな話をしながら絶景ダイヤモンドビーチを後にする。
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.08.26(土)
文・撮影=大坪千夏