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クリスティーヌはエリックと音楽で魂が結び合っていた

――少し、宝塚時代の『ファントム』のお話も伺わせてください。以前、相手役だった望海風斗さんが、『ファントム』をやるのが念願だったけれど、自分の夢に雪組のメンバーを付き合わせてしまったかなとも思う、とおっしゃっていたんです。

 望海さんが「エリックを演じるのが夢なんだ!」とお話ししてくださったことがありましたが、そんなことを思われてたんですね(笑)。組のみんな楽しんで取り組んでいましたよ!

――真彩さんは、当時『ファントム』が決まったときにはどう思われていたんでしょう?

 私は「やった! クリスティーヌができる! 夢叶う! 望海さんのエリックが見れる! ひょえ~!!」です(笑)。宝塚の作品の中で、私にとって『ファントム』のクリスティーヌは憧れの役でしたから。そして……望海さんエリックのクリスティーヌになれる! と心の中で大騒ぎです(笑)

――演じるにあたって苦労された思い出はありますか?

 宝塚の場合はシングルキャストですから、一番記憶にあるのは、公演中毎日朝起きる度に、今日もちゃんと声が出るかなと、緊張してたことですね。

 当時の私は、どう考えてクリスティーヌ像を作っていたんだろう……。音楽が好き、ただ、その想いだけだった気がします。音楽に導かれて、歌に導かれて、そこで起こることに向き合っていくというか。その時はすごく考えていたんですよ。考える人ではあるんですけれど、公演が終わったらすぐ忘れる人間でもあるので、とにかく心から音楽を愛して愛されて……ってことはすごく感じていました。

――望海さんも歌のスターとして知られていましたが、そこに対する緊張感のようなものはありました?

 それはないですね! それぞれに自分のやるべきことに必死でしたし、それぞれに作品の中で与えられてる役割も全然違いましたから。ただ、クリスティーヌはエリックに導かれて、歌の才能を開花させていく役ですから、音楽の影響をエリックから受けているところはとても意識していました。

――今回はどんなクリスティーヌになるんでしょう?

 本番までにじっくり見つけていこうと思っています。同じ『ファントム』という作品ですが、宝塚で演じたものとはセリフも歌詞も全然違う。ただ、宝塚版に比べて、歌詞が、わりと具体的な言葉で表現されている部分が多く、求められているクリスティーヌ像が違うように感じています。

 稽古で歌い込んでいく中で、歌詞の表現に自分の魂をのせていけたらと思っています。また、城田(優)さん、加藤(和樹)さんのエリックからインスパイアされる部分も、稽古場でひとつでも多く発見し、感じて表現していきたいです。

――ちなみに、『ファントム』ではクリスティーヌはエリックの存在を受け入れますが、そこはどのように解釈しています?

 音楽で魂が結び合っていたからかなと。クリスティーヌは、エリックが自分にあたたかい希望の光を持っているということがわかっていたから、たとえお顔を仮面で隠していても素性が分からなくても優しい彼を信じていたのだと思います。あとは、クリスティーヌがめちゃくちゃ素直で人を疑わない子だからなのではないでしょうか! 私なら受け入れられると思ったのでは(笑)

2023.07.21(金)
文=CREA編集部
撮影=深野未季