3つ目は、RPGの可能性をさらに高めることへの期待です。かつて日本のゲームで人気のジャンルと言えばRPGでしたが、特に日本のクラシックなRPGには「やらされている感が強い」というイメージを持つ人もいて、今ではFPS(一人称視点のシューティングゲーム)や、自分の好きにモノづくりに打ち込める「クラフトゲーム」、マップの中で自由に冒険できるオープンワールドのジャンルが人気になっています。
この流れの中で登場した今回のFF16 は、RPGでありながらもアクションの要素をかなり強く打ち出しています。面白いのは、初心者でも戦闘シーンでボタンをガチャガチャ叩いて遊べる一方で、設定を変更すればコアなゲーマーでも手ごたえがあるように作っていることです。
プレーヤーの工夫次第でコンボ(連続攻撃)を繰り出すことができますし、一度クリアしたボス戦なども、より華麗な「コントローラーさばき」を競えるように繰り返し挑戦できるようになっていて、ゲーム実況を意識してか従来のRPGとは違う作りになっています。
こうした仕様は、初心者と上級者の両方にも対応できる“欲張り”なものですが、「実にらしい」とも言えます。以前、FF14で吉田直樹プロデューサーに取材した際にも、「ドラゴンクエスト」の生みの親である堀井雄二さんから、初心者への配慮について教わったと語っていました。
FF16ではプレーしても、「ガイド」が表示され、次にやることがすぐわかるゲーム設計になっています。初心者と上級者は、視点や求めるモノが全く異なるため、両者の要求を満たすことは並大抵でないはずですが、その両立を図りながら作品を深めているのです。
「最新作のFFからナンバーリングがなくなる」説をプロデューサーに聞いてみた
もちろん、これらの期待はそれぞれにいわば中長期的視点の重たいものであり、達成できたのかが分かるのは数年後になりますが、PS5用ソフトという限定されたプラットフォームながら現時点ですでに300万本の出荷。PS5本体の世界出荷数が現時点で約4000万台ですから、PS5所有者の7~8%がFF16を購入した計算になります。まずは順調に船をこぎ出した……というところでしょう。
2023.07.14(金)
文=河村 鳴紘