ふりかえるとたしかに、FFシリーズほどこの言葉が合うタイトルはなかなかありません。
初代FFの発売時は、会社(旧スクウェア)が存続の危機にありましたし、FF7もプラットフォームを任天堂からソニー陣営に移して業界を驚かせました。FF11も、「オンラインゲームは成功しない」と言われる中でサービスを20年以上続けています。
また、FF11の後継オンラインゲームとして誕生したFF14はサービス開始直後から大不評で、当時の経営者が陳謝して責任者が交代。一度は「失敗」の烙印を押されましたが、ゲームを丸ごと作り直すという“離れ業”で巻き返しました(ちなみにFF16の吉田直樹プロデューサーは、FF14を立て直した責任者です)。
FFシリーズは、目の肥えたファンが多く、厳しい批判にさらされることもあります。ただ、それは人気の裏返しであり、ゲームシステムをガラリと変えるなどの挑戦を続けているからこそでもあります。そうした姿勢がFFシリーズの魅力であり「らしさ」なのです。
FF16が背負う3つの期待
最新作のFF16は、ビッグタイトルだけに多くの期待を背負っています。大きくは次の3つです。
1つ目は、ヒットするのは「当然」で、ハードそのものの売り上げをけん引してもらわなくてはいけない……というPS5の看板タイトルとしての期待です。
そういう意味ではFF16は、FF10(2001年発売)の時と立ち位置が似ています。FF10が出た当時、販売されていたPS2はDVD再生機という位置づけが強く、肝心のソフトの売れ行きは当初芳しくありませんでした。FF10の登場で、他のソフトの売れ行きが伸びていったのです。
FF16も、PS5の市場への供給体制がいよいよ整備されたいま、まさに満を持しての登場になっていて、他のPS5ソフトの売れ行きを伸ばすような“触媒”の働きを求められています。
2つ目は、ゲーム業界自体を盛り上げることへの期待です。知名度も高く影響の及ぶ範囲も広いタイトルであり、歴代シリーズ同様に今回も巨額の開発費を投じ、テーマソングを担当した米津玄師さんを筆頭に、腕利きのクリエーターを集結させています。ゲームの中身はもちろんビジネスとしても大きく展開していくことが期待されています。
2023.07.14(金)
文=河村 鳴紘