午前10時までに行けば、たぬきかきつねを選べる朝のサービスメニュー「朝そば」(330円)が人気である。破格の値段である。

「海鮮天そば」はエビ天・イカ天・キス天などがのった豪華な一品で、海鮮種はその日によってキス天がアジ天に変わったりするようだ。

 

「かき揚そば」は春菊と紅生姜がきれいに飾られたかき揚がのる人気メニューだ。

「ゲソ天そば」はゲソがゴロゴロ入ったかなり大きめのゲソ天がのる。日暮里「一由そば」のゲソほどは硬くない。

 また、鶏だしということで当然「カレー」がうまいと評判である。そばと一緒に注文できる「ミニカレー」(250円)はスパイスと鶏だしの香りが利いた全然ミニじゃないサービス品である。

「鶏だしつゆ」には生姜がよく合う

 さて、「鶏だしつゆ」に最初に出会った時のことを少し紹介しようと思う。最初に食べたのは「ゲソ天そば」だったのだが、その温かいつゆをひとくちのんだ時の印象は次のようなものであった。

・鶏だしと鰹節系のだしはよく合うし、まったく違和感はない。

・鶏だしはふくよかな丸味があって上品な味である。

・薬味の生姜を溶いて飲むと、味の輪郭がしっかりしてくる。

・生姜と鶏だしと濃口醤油の要素が調和した味である。

 JR中野駅前にある立ち食いそば屋「かさい」でも薬味の生姜が大人気だ。大衆うどん店でも薬味に生姜を出すところも多い。しかし、「鶏だしつゆ」の店はここだけである。

 そばは大手製麺所のやや太めの茹麺を使用しているが、コシもあり「鶏だしつゆ」との相性がなかなかよい。

 

「冷しゲソ天そば」(生姜入り)で注文

 さて、店主おススメの「冷しゲソ天そば」の話題に移ることにしよう。これは冷たいそばの上にゲソ天、わかめ、ゆで玉子半分、ねぎがのり、冷たい鶏だしのつゆがかかったもの。通常はわさびが薬味として添えられるが、温かいそばのように生姜を入れてもらえるか聞いてみるとOKだというので、生姜入りでお願いした。 

 まずつゆをひとくち。この冷しのつゆは抜群にうまい。次のような印象である。

・山形県の郷土麺として有名な「冷し鳥中華」や「冷し鳥そば」のつゆの味に近い。

・冷しの「鶏だしつゆ」にゲソ天の味が溶け出していく。

・冷しのつゆはわさびもうまいが、生姜が抜群に合っている。

・冷しのつゆにゆで玉子はよく合う。

 そしてやや太めのそばは冷されてコシがしっかり。キンキンに冷された「鶏だしつゆ」との相性は抜群である。大きなゲソ天をガブリとかじり、そばをすすり「鶏だしつゆ」を飲めば、もう何も言うことはない。冷しそばとしてはかなり完成度の高い一品に仕上がっている。

2023.06.24(土)
文=坂崎仁紀