当時の価格は忘れてしまったが、現行品でいえば2万3000円ほど。アメリカの登山用品メーカーMSRを代表するこのストーブの最大の魅力は、使用する燃料の質を選ばないこと。「キャンプ用のホワイトガソリンしかダメよ」なんて甘いことは言わないのだ。そこはさすがアメリカ製。どんな山奥のオンボロガソリンスタンドの、いつ精製されたのか怪しいガソリンでもしっかり燃焼してくれ、詰まることもない。これは本当に素晴らしい。
しかし弱点もある。いや弱点ばかりといっても良いかもしれない。まず着火が難しい。プレヒートが必要ですぐにお湯が欲しい時でも、なかなかスタートしてくれない。そして火力調整が絶望的に難しい。いや出来ないといっても良いだろう。消えてるか、フルパワー強火かのどっちかなのだ。これで米が上手に炊けたら一人前だろう。私ができるかって? もちろんオーストラリアの砂漠で炊き込みご飯を堪能したのだから、間違いはない。
必需品な「おまけ」:海外に行くということは…
ここからは「おまけ」ではあるが、海外取材時の大事な2つのアイテムを紹介したい。
ひとつ目は指さし会話帳。英語の通じない地域の取材が好きだ。なぜなら英語を話さなくて良いから。色々と海外取材に行っているが、英語はどうしても苦手なままだ。もちろん最低限の英会話はできるが、まあ自分で言うのもなんだが本当に下手くそな英語なのだ。
そこで英語圏の取材である。英語圏の人たちって、世界中の人が英語が話せて当然だと思っているんだよね。あれは疲れる。もちろん英語が苦手な人のために、ゆっくり話してくれたりするけど、それでも英語が話せるってのが大前提で社会は動いている。
それに比べると、英語が通じない国は楽ちんなのだ。誰も私が、タイ語やラオス語や、アラビア語、モンゴル語なんかを理解できるとは思っていない。お互いに知っている限りの英語と、辞書や参考書、そして笑顔と身振り手振りで意思の疎通を図るのだ。
2023.06.17(土)
文=阪口 克