僕が使っているシェラカップは本家本元シエラクラブが作ったものではない。残念ながら。ではどこのメーカー製かというと、よくわからない。鍋底には登山専門出版社の山と渓谷社がかつて出していた雑誌「ヤマケイJOY」の刻印がある。どうやらカメラマンとして同誌の取材で山へ行った時に、もらったものらしい。

 この頃はまだまだ出版界も景気が良かったのか、このシェラカップはチタン製だ。おかげで非常に軽く、いろいろな取材先で重宝している。

 

5、調理用ストーブ:通常、キャンプで調理するならガスボンベタイプが良いが…

 好んで海外辺境へ取材に行くカメラマンとは言え、いわゆる冒険家とは違うので、基本は人里の近くで取材をしている。なので自分で調理をすることはあまりない。しかし1~2泊程度の野宿の可能性を無視はできないので、アウトドア調理用のストーブを持参することは多い。

 キャンプ用のストーブにはいろいろな種類があるが、特に燃料によってのジャンル分けが重要だ。キャンプで調理するなら、やはりガスボンベを使うタイプが一番便利だろう。ガソリンや灯油、アルコールなどに比べ、着火も消火も一発だし、火力調整も自由自在。気楽に加熱調理をスタートできる。

 しかし、ガスボンベは飛行機での持ち運びができない。空路移動が必要な海外取材や、国内でも離島への取材などでは、現地で自分のストーブに適合したガスボンベが買えるかどうかが重要なポイントになる。だが大抵の場合、現地で買えるかどうかなど事前に情報が得られず、規格が合ったボンベがないことも多いのだ。

 そこでガソリンストーブが必要になる。なぜガソリンか。それは世界中でどこでも必ず手に入るからだ。どんな奥地の小さな村でも、いや奥地だからこそ、ガソリンは必ず備蓄されている。

 ガソリンストーブも今は色々と便利な製品が出ているが、私がオーストラリア自転車一周に旅立った頃は、選択肢はほとんどなかった。その少ない選択肢の中で、迷いなく選んだのがMSRのウィスパーライトだ。

2023.06.17(土)
文=阪口 克