石井 ここは尾道じゃろう? じゃあ来ていませんね。

 小川 元カレは尾道の人じゃなかったんですね(笑)。今日皆さんに見せようと、先生の写真を探したんですが、この1枚しか見つかりませんでした。考えてみたら、昭和40年頃はほとんどの家にカメラなんかありませんでしたもんね。

 石井 分限者の家じゃないと、持ってなかったんですなあ。

老人ホームで歌を披露

 小川 石井先生の本に、先生が電子ピアノを弾きながら大きく口を開けて歌っている写真が載ってましたけど、僕の頭の中にある先生のイメージは、まさにこれなんです。

 当時の学校は木造の校舎で、教室の中に足踏みオルガンがあって。先生が「これで今日の授業は終わりです。皆さん、学区別に順番に帰りましょう」と言って、オルガンでフォスターの『スワニー河』を弾くんです。ミレドミレドドラド~♪

 石井 ソミドレ~♪

 小川 メロディにのせて、みんなで「一学区、一学区~♪」と歌うと、一学区の子どもらが出ていくわけです。切れたら先生が「はい、次は、二学区、二学区~♪」って。

 石井 やってましたねえ。

 小川 大学で先生の甥の石井課長に最初に会ったとき「石井先生は最近どうされてますか?」と聞いたら、「近くの老人ホームに慰問に行って、みんなで歌を歌っている」と。

 石井 はい、行ってました。

 小川 僕はそれを聞いたときに、「ああ、さすが石井先生だ」と思ったんです。先生っていつも人を楽しませようとしますよね。もちろんご自身も楽しいんでしょうけど。

 石井 今も近所の人と集まって、大正琴を弾きながら歌う練習に行きようります。まあ練習しようるんか、お茶を飲みようるんか、ようわかりませんけど(笑)。

 小川 オリジナル曲もあるんですよね。

 石井 『中野ソング』という歌です。作曲・石井哲代。歌・石井哲代。世界に一つしかありません。

 小川 聴いてみたいです。

 石井 そうですか? もう103歳の声でございます。声が出なんだらごめんなさい。

2023.06.15(木)
文=石井哲代、小川 長