K-POPに韓国ドラマ、日本人が夢中になる力をもつ韓国エンタメ。姿かたちはそっくりなのに、日本人が韓国の美貌に惹かれるのは、美容整形が当たり前の国だから、だけではない理由がある?


#1 そもそもなぜ韓国の美貌はかつて「オルチャン」と名付けられたか?

 既に韓国では死語に近いが、日本では数年前に改めて盛り上がった「オルチャン」信仰。そもそも韓国ビューティが日本を席巻するきっかけも「オルチャンメイク」にあったわけで、その意味を改めて繙くと、オルグル=顔、チャン=最高を組み合わせた造語で、じつは「美人」というより、「美少女」「美少年」の意味合いが強い言葉。

 つまり最高の美は、穢れなさやピュアで清らかなことにあるという提言だった。フレッシュな美少女、美少年を集めたテレビ番組『オルチャン時代』にルーツがあるのもその証。

 だからメイクも、透き通る白肌や涙袋、黒目を大きく見せるカラーコンタクト、リップティントによる少女唇……と、あくまで少女顔の清らかさを追求した形。カワイイを溺愛する日本人も、ここまで本質を突く“少女っぽさ“の徹底には恐れ入ったということか?

『オルチャン時代』は韓国で2009~13年に放送。ネットで話題の美男美女を紹介するバラエティ番組。ユン・アラ、ユ・ヘジュなどが人気だった。ともに現在もインフルエンサーとしてSNSで注目されている。

#2 髪が長くないと女じゃない? 韓国男女のフェミニズム戦争の行方

 驚かされたのは、東京五輪で金メダルを3個も取ったアーチェリーのアン・サン選手が韓国では批判の的となり、その理由が「ショートヘアだから」であること。日本人にはおよそ理解できない話だが、アン選手を「フェミニスト」と呼び、敵対視するのは主に若い男性。ますます謎だ。

 本来が女性の権利を求める言葉なのに、なぜフェミニストと敵視? それも韓国では、女らしさの放棄=男性嫌悪という妙な見方があり、ショートヘアはその象徴として忌み嫌われている。当然ながら反発する勢力も生まれ、言わばフェミニスト戦争の様相を呈しているのだ。

 そこには「女性は女性らしく美しく」を強制するような性差別があるのを物語る。韓国女性はルッキズム以前の偏見と戦っていたのだ。その気高さもまた日本人には美しく映るのか?

#3 どんなに露出しても清潔感を主軸とするのが韓国流

 日本でK-POPを流行させたKARAは、ヒップダンスで文字通りヒップを突き出し振り振りした。少女時代はショートパンツで長い生脚を露わにした。言うまでもなくK-POP女子の最大の魅力はセクシーであること。ダンスの決め手も腰とくびれを強調し、腕すらも顔の周りでくねくねさせる媚態。まぁこれでもかと艶めかしさを全開にする。

 でも彼女たちはイヤらしかっただろうか。下品でケバかっただろうか。そう見えないのは、あくまで清潔感に溢れてるから。肌と髪と面立ちの透明度が高いから。TWICEも、デビューしたてのIVEやLE SSERAFIMも、艶めかしいけど清らかだ。

 韓国の美の生命線はどうあろうと清潔感なのだ。正直、大人が女子高生の制服を着るより清潔だ。だから日本人の目に美しく見えること、見逃してはダメ。

2023.05.29(月)
文=齋藤 薫(美容ジャーナリスト)
Photographs=Hirofumi Kamaya(cosmetics)

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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