授業後、大学院に通うマレーシアの先生たち
伊藤 娘の留学先の高校では、ITを使った教育もすごく進んでいました。このまま社会に出しても普通に仕事ができるんじゃないかっていうくらいのさまざまなITスキルを身に着けていたんですよね。
野本 21世紀型の教育というのは、ITスキルが目標のひとつに入っています。うちの近所の学校では、小学校2年生くらいからパワーポイントでプレゼンをしたり、動画を作る宿題が出るんですよね。
伊藤 すごいですね。コロナのパンデミックで緊急事態宣言下のころ、次男が小学校に入学したばかりでした。授業はないのに、宿題だけは出される。リモートワークで週刊誌の仕事をしながら、息子に算数の引き算や国語の教科書を朗読させたりしていました。かたや娘の高校では、2020年の2月には一斉にオンライン授業が始まりました。公立小学校はオンライン授業どころかPC配布すらなくて1学期が終わってしまいました。
野本 先生は忙しすぎて、ITを学ぶ時間がなかなか取れないんでしょうね。
伊藤 野本さんの本の中に出てくるマレーシアの国際バカロレア校の校長先生ヴィンセント・チアン博士が、「僕の学校では先生も学びをさせている」ときっぱりとおっしゃってましたよね。授業が終わったら、あとは学びの時間だと。たとえば大学院に行ってPh.D.を取得している。先生自身がハッピーで、人生を充実させることができれば、自然と優秀な子が集まってくる。先生も幸せになるし、生徒も幸せになる。その考え方にとても感動したんです。
野本 あの学校のエピソードは実はあとから入れたんですよね。書籍を作っているときに取材に行って、先生全員に正規の教育を受けさせている学校があると知って、「こんな学校があるんだ」とすごくショックを受けました。ぜひ本で書きたいと思って。
伊藤 校了も近いのに、野本さんが毎日のようにアップしているnoteやVoicyで、「これ面白い!」と思ったエピソードをどんどんゲラにぶっこんで。それでゲラを読むのが大変になっちゃったんですよね(笑)。校了した後も、「この話入れたかったな」っていうのがありました。どこまでで内容を切るかは悩みました。
野本 あったんですか?
伊藤 ありました。でもそんなことを言ってると本が出なくなっちゃうので(笑)。
2023.05.23(火)
文=文藝春秋