この記事の連載

 ほんのひとことプラスするだけで、さりげない品と気づかいが伝わり、たとえ反論意見でも雰囲気を悪くすることなく、自分の気持ちを伝えることができる。それが「ちょい足し」ことばです。

 教えてくれるのは、元TBSアナウンサーで、現在はコミュニケーション塾を主宰、アナウンサーや企業の経営層に研修や講演を行うなど、60年以上ことばの世界に身を置く今井登茂子さん。見たことのあることばでも、的を射た使い方で会話はグンと弾み、コミュニケーションがより豊かなものになります。

 今回は、新刊『さりげなく品と気づかいが伝わる ちょい足しことば帳』(朝日新聞出版)から一部を抜粋・改編して「意見・提案・反論・質問」のちょい足しの数々をご紹介します。


意見や提案、反論、質問……。言いにくいことも、「ちょい足し」ことばで「心」が伝わる。

 意見や考えの表明や反論は、とても緊張します。言い方やタイミングによっては、誤解されることも。せっかくなら、相手に純粋に耳を傾けてほしい。できれば意見を採用されたい。そのために、相手に“聞く態勢”をつくってもらうひとことです。

【1】たとえば~というのはいかがですか?

Aさん:前川さんが選んで、私が発注しますか?
     ↓
Bさん:たとえば前川さんが選んで、私が発注するというのはいかがですか?

■人は相手に決められることを好まない

 会議や議論の場において「こんな意見や考えもありますよ」と提案する際に、あなたの決めつけや押しつけと受け取られると、場がピリッと緊張してしまいます。

 「たとえば」ということばは、自分が述べているのは、あくまで一つの意見や案であって、相手の選択肢を増やすのに役立ててもらったり、この提案をさらに広げたり、アレンジしたりしてもらえたら、という柔軟性があることを示します。

 さらに「いかがですか?」と問いかけることで、ボールを相手に渡します。

 自分のアイデアを採用してほしいときであっても、こうした表現のほうが、相手も受け入れやすいし、検討しようかという気持ちになり、ほかの人が意見を出しやすい提案になります。

*類義語

・ちょっと別の角度から考えてみたのですが
・ひとつご提案なのですが


●ワンポイントアドバイス

「あくまで一案ですけれど」と、押しつけを回避できる。

2023.05.18(木)
文=今井登茂子
構成=三宅智佳
撮影=釜谷洋史