ゲームを愛する人たちが作った「ゲームによるゲームのための映画」

 さて、では今回の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はどうだったのだろうか。作品の態度としてはもはや「みんなマリオは知ってるよね」というくらいである。

 全般の印象としてはイルミネーションらしいファミリー映画といったところで、テンポのよいさまざまな楽しい映像を詰め込んだ作品だ。ただし、「マリオ」シリーズに関する大量の引用やオマージュ、そしてプレイヤーの過去のゲーム体験を想起させる作りすらたっぷり入れているのである。

 もはやゲームに対する忌避感や、「ゲームは見下されるもの」なんていう認識の古さとは無縁の作りであり、平たくいえばゲームへの愛情を感じられる作品だ。これは最近の“ゲーム映像化作品”のトレンド、もしくは常識といえるだろう。

ゲームに対する捉え方が大きく変わった

 2023年3月に公開された『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』という映画がある。この作品は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』というTRPG(テーブルトークRPG、卓上で紙・鉛筆・ミニチュアフィギュアなどを使用しつつ、会話しながら遊ぶゲーム)を題材にしている。

 同作もまた高い評価を得ている作品で、原作を遊んだ人がニヤリとできる要素を随所に入れつつも、まったく知らない人も楽しめる王道娯楽映画に仕上がっている。そして、制作陣がTRPGに対する理解を持っているのは疑いようもない。

 しかし、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』はかつてアメリカで「悪魔崇拝のゲーム」と非難されていたことがある。若者の失踪事件と強引に関係性を見出されるなど、1980年代には相当悪く言われていた。いまから40年近く前、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』はそういう態度がとられて当たり前の作品であり、世間の“ゲーム”に対する認識も今とは異なるものだったのだろう。

 だが、いまはどうだろうか? 優れた映画として『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』が世間に受け入れられたうえに、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』も大ヒット。幅広い層が楽しめる娯楽映画として受け入れられているのだから、ゲームに対する捉え方は大きく変化していると考えてよいだろう。

2023.05.08(月)
文=渡邉卓也