2024年のオリンピックに向けて、新施設が続々とオープンするパリで、いま話題なのが5ツ星ホテルの「ホテル マダム レーヴ」。2021年10月、ルーヴル中央郵便局の跡地にオープンしました。

ルーブル美術館から徒歩10分、ナポレオン3世が政権を握っていたオスマン時代に建てられたルーヴル中央郵便局。
1888年からパリ1区のランドマークとして親しまれてきたルーヴル中央郵便局の跡地とあって、いまも郵便局が併設されています。インターネットがまだ発達していなかった時代には、夜中まで開いていたこの郵便局に、多くのパリジャンがお世話になっていたのだそう。このシックな石造りのファサードの隅にある小さなドアがホテルのエントランス。19世紀の個人宅のような趣で、あえてシンプルにこぢんまりと設計されています。

このホテルを手がけたのは、映画、音楽、アート、不動産、ケータリングなど、さまざまな分野で才能を発揮している実業家ローラン・タイエブ。「le Café du Trésor」、「Bon」、「KONG」など、パリの人気レストランのディレクションでも知られています。
そんな彼が「パリジャンも観光客も交流できる象徴的な場所を作りたかった」と、長い時間をかけて構想を練ってきたとあって、レストランやルーフトップガーデンは感度の高いパリジャンたちからも人気。そして何より、彼が細部までこだわり尽くした、19世紀の建築や装飾要素が残るクラシックな内装が魅力なのです。

中に入るとまず目に飛び込んでくるのは、小さなレセプションスペースを彩る美しいモザイク床と壁画。高い天井や壁の縁取り、シャンデリアなど、19世紀の建築や装飾要素を残しながら改装されています。まるでタイムスリップしたかのような気分を味わえるクラシックな内装。
インテリアは当時のものを再現しながら現代的に作り直していますが、中には、エミール・ガレのオンブレルチェアのように、オルセー美術館に所蔵されている歴史的価値のある貴重なものも。また、古く王室で使われていたという照明器具や鏡など、至るところにアンティークの調度品が設えられています。


2023.05.08(月)
文・写真=鈴木桃子