矢部 そうでしたか。本の中で、心をお月様にたとえていましたよね。

哲代 はい。満月のときもあるし、欠けて三日月のときもある。

矢部 僕もそうです。三日月どころじゃなくてね、皆既月食ぐらい真っ暗なときもあります(笑)。

 

「年寄りは今頃の若い人みたいに、ツンツンしたらいけません(笑)」

哲代 でもね、いつかは晴れる。晴れるように自分をもっていく気持ちが大切だと思います。

矢部 哲代さんは今、自分で自分のこと何歳ぐらいだなって思っていますか?

哲代 まだ70歳か80歳ですね。

矢部 わかります。僕だってもう40歳超えてますけども、気持ち的にはまだ20代の部分があります。

哲代 そうですよねえ。デイサービス行っても、私がほかの年寄りのお世話をしたいくらい。みーんな年下だけど(笑)。

矢部 デイサービスの職員さんも、哲代さんのことを頼りにしてるんじゃないですか。

哲代 どうかなあ。そうだと嬉しいですなあ。年寄りは機嫌ようしときたいもんです。今頃の若い人みたいに、ツンツンしたらいけません(笑)。

矢部 ツンツン(笑)。

哲代 若い人が真似したくなるような、かわいげのある年寄りにならんといけんって思うんでございますよ。

矢部 僕は最近、『マンガ ぼけ日和』という本を出したんです。認知症の専門医の方が書いた本が、本人も介護する人も不安がやわらぐような内容だったから、漫画に描いてみたいなと思いまして。

哲代 (漫画の表紙を見て)かわいい絵ですね。こういう、ええおばあさんになりたいです。

 

「デイサービスでは新米じゃけね」

矢部 もうなってますよ。哲代さんは、僕の描くおばあちゃんにすごく似てます。

哲代 そうですかねえ。

矢部 あ、それで、この漫画を描いて知ったんですが、お年寄りの中には、デイサービスに行きたくないという人も結構多いんですよね。

哲代 気の毒ですね。そういう人には、「元気出しんさい」と声をかけてあげたいんじゃが、まだ私もデイサービスでは新米じゃけね。我慢しとるんです。

2023.04.17(月)
文=臼井良子