この記事の連載
- 星のや京都 前篇
- 星のや京都 後篇
窓が切り取る嵐山の花鳥風月に外界を忘れて
「星のや京都」の前身は明治創業の旅館。現在の客室にも、100年前の鴨居や欄間、天井など、現在では再現できない稀少な素材や技術が随所に残されています。これらは、京都の職人の「洗い」という技術によるもの。そのままでは古ぼけて見える古材や意匠を、重みのある美しさとして蘇らせています。
寝室の壁紙は「京唐紙」という版画紙。版木で一枚一枚摺り上げられる文様は、印刷では出せない独特の風合いがあり、光の射す角度によってゆらぎ、静謐な室内の表情を豊かにします。
また、特注で仕立てられた「畳ソファ」は、体を預けると正座した時の目線の高さになる優れもの。伝統的な日本建築の意匠や窓からの景色は、正座した目線から最も美しく見えるように作られていることがわかります。
平安時代から変わらない嵐山の自然に抱かれ、京文化の美意識がそこかしこに息づく客室で過ごすひととき。その何とも言えない安堵感と心地よさ。いつまでも身を委ねていたくなります。
2023.04.15(土)
文=伊藤由起
撮影=橋本篤