さて、コンピレーションアルバム「平成の答え合わせMIX」に話を戻すと、ポケベルのCMで一躍時の人となった広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」も収録されている。この曲は歌詞にまだ「ラブレター」が登場するのだ。リリースされた1997年は、ケータイでショートメールが送れるサービスが出たころ。とはいえまだまだ黎明期で、メール文化と手紙文化の中間地点だったのかも。ラブ“レター”。なんともエモーショナルな響きである!

 

 同じく収録されているYUIの「CHE.R.RY」は2007年にリリース。10年も経つと「指先で送るキミへのメッセージ」とあるように、もうケータイメールも一般化している。この年にAppleが初代iPhoneを発表し、翌年の2008年には、ソフトバンクが日本初のiPhone端末「iPhone 3G」を発売した。

 今やSNSが普及し、スマホさえあればどこでも秒でつながれるようになった時代。けれど「返事はすぐにしちゃダメ」といった駆け引きは変わらない。物理的なすれ違いは減ったが距離を言い訳にできなくなったぶんだけ言葉や思いのすれ違いは増え、別のドラマ性を生んでいる。

平成に進化した「カラオケ」

 もうひとつ、平成に進化した「なかなか言えない本当の気持ちを伝える」手段がある。カラオケだ。ドラマでもよく流れたZONEの名曲「secret base ~君がくれたもの~」(2001年)は今でもカラオケでよく歌われる。この曲とKiroroの「Best Friend」は私も経験があるが、友だちと一緒に歌いながら、照れてなかなか言いにくい感謝や再会の約束を言える。歌の力を借りて本音を吐露する。カラオケとは、そういった役目も果たしてくれる。

 カラオケボックスが一般普及したのは昭和の終わり1986年ごろから。その急激な普及とバラエティ豊かな発展はJ-POP全盛の背中を押した。ヒット曲だけ書かれた薄いカタログを見ながら曲を入れていたのが、次第にアルバム楽曲もどんどん入り、リモコンになり。オンラインでデュエットしたり、見知らぬ土地の見知らぬ人とランキングを争えるまでになった。

2023.03.29(水)
文=田中 稲