次々と最終回を迎えている2023年冬ドラマ。そのなかで大きな話題をさらったのが、バカリズム脚本の「ブラッシュアップライフ」。一時期だけでなく、生まれてから死ぬまで、今世をキッチリ何度もやり直すという斬新なタイムリープもので、主人公あーちん(安藤サクラ)と同級生たちを軸に話が進む。彼らが平成元年(1989年)生まれという設定で、平成31年間の「あったあった!」なカルチャーがズラリ登場。たまごっちやゲームボーイアドバンス、シール手帳、そしてなによりJ-POP!!

ドラマCDは「平成の答え合わせ」

 3月8日にリリースされたこのドラマのコンピレーションアルバムのタイトルも、ズバリ「平成の答え合わせMIX」だ。ドラマを観ていなくても、十分伝わる「たった31年、されど31年」。いやはや、平成の変化はとんでもなかった。ドラマのように生まれ変わるわけにはいかないが、気持ちだけでもアルバムの歌に乗せながら、平成行きの白い扉を開いてみたいと思う。

 まず、しみじみしたのが国武万里の「ポケベルが鳴らなくて」である。1993年リリースということは、ポケベル文化大流行からもう30年経ったということに仰天だ。ケータイ文化の進化早っ! 私はアナログ人間だったので残念ながらポケベルを持つ機会がなく、病院で、呼び出し用に数度持たされただけである。

「メンドくさ!」「ぞっとするね」「そりゃポケベル鳴らないわ」

 ドラマの主人公たちは平成元年生まれなので、ポケベル大流行のときはまだ保育園。私と理由は違えど、ポケベルを使い逃した世代である(1997年ごろからPHSが主流に)。ドラマ第一話で、主人公の3人がスマホでポケベルとはどんな仕組みだったのか調べ、数字と日本語を照らし合わせたコード表に

「メンドくさ!」「ぞっとするね」「そりゃポケベル鳴らないわ」

 と会話するシーンがあったが、確かに。当時の愛用者は、あんなスパイの暗号みたいな羅列をよくぞ覚えたものだと改めて思った。これを使いこなした代表がコギャルで、世代としては、90年代前半、高校生活を送った人たちだ。当時大ブームだったJ-POPは、TRFや安室奈美恵などのコムロファミリー。1995年から1997年の高校時代と2018年がリンクして描かれている映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』も、思い残しを回収する、平成の答え合わせだ。「ブラッシュアップライフ」に引っ張られ、もう一度観たくなった。

2023.03.29(水)
文=田中 稲