最も心に残った感想は…

―ヴェネツィア映画祭でのお披露目以来、様々な感想を聞いてきたかと思いますが、最も心に残っている言葉は?

 トロント映画祭での上映の後、Obesity Action Coalition(肥満に苦しむ人たちを支援する団体)のスポークスパーソンから手紙をもらったんだ。

 彼は映画を褒めてくれ、「この映画のおかげで誰かの命が救われたと思います」とまで言ってくれたよ。

 この映画を通して肥満に対する社会の偏見を変えることは、僕の目的でもあった。2023年だというのに、世の中にはまだ差別や偏見が根強くある。この映画が語るようなストーリーを聞くことで、考えを変えてくれる人はいるのではないかと思う。

 もちろん、頑固な人もいる。そういう人に対しても、僕は努力はしてみたよ。(今作の脚本家で、ベースとなる舞台劇を書いた)サミュエル・D・ハンターは、「今作は招待状だ」と言った。僕も同感だ。この招待状を受け取るかどうかを決めるのは、人それぞれ。だが、受け取って、チャーリーの家に入ったら、そこにあるものをよく見てほしい。チャーリーはアイダホ州に住んでいるけれど、同じことは多くの場所で起こっているんだ。悲しいことに、それはいつも闇の中で起こる。僕らはそこに照明を当てたんだよ。

ブレンダン・フレイザー 1968年12月3日生まれ。アメリカ・インディアナ州出身。1991年に『恋のドッグファイト』で映画デビュー。1999年、代表作となるスティーヴン・ソマーズ監督による大ヒットアクション・ホラーアドベンチャー『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』の主役を演じる。以降、シリーズ続編2作に出演。『センター・オブ・ジ・アース』(08)では主演、製作総指揮を務めるが、その後は、心身のバランスを崩ししばらくの間ハリウッドの表舞台から距離を置く。近年は「クライム・ゲーム」(21)などテレビドラマに出演し、本作で映画主演にカムバック。第95回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされた。

2023.03.25(土)
文=猿渡由紀