楽曲における「分かりやすさ」「シンプル」

——誰にでも分かる言葉で心にストレートに入り込んでくる歌詞が印象的でした。詞を書く時に意識していることは?

橋口 「分かりやすさ」は大事にしています。僕は比喩をあまり使わないんですよ。「好きだ。愛している」という気持ちを表す時、「好き」という言葉を使わずにいかに表現するか、それが詩の美しさだ——なんてよく言われるんですが、僕は相手に伝わるんだったら「好き」も「愛してる」も平気で使います。フレーズに制限はかけたくないんですよね。むしろ、詩的な表現かどうかより、テーマの設定や登場人物のキャラクターをしっかり考えて歌詞を書いています。

——wacciの曲は年々、歌詞がシンプルになっている気がします。

 

橋口 そういう指摘は嬉しいですね。作詞・作曲って能力として“数値”が見えづらいものなんです。「歌がうまくなった」「楽器がうまくなった」は見ればすぐ分かりますけど、「作詞・作曲が上手くなった」って分かりづらいですよね。でも、シンプルな歌詞で多くの人に届けられるようになったということは、自分的には「上手に歌詞が書けるようになった」という解釈ができる気がしました。

——歌詞はシンプルな一方で、楽曲の構成は緻密で繊細。バンドのアレンジもかなり凝っています。

橋口 メンバーの音楽性は元々バラバラですしね。ジャズ研出身だったり、ブラックミュージック好きだったり、フュージョン好きだったり……色々な人が集まったバンドがwacciです。音楽性の幅は広いと思います。僕が書く曲のコードには、かなりこだわりを持っています。僕らはポップスバンドですが、よく聴くとコード進行が複雑で難しい。この点はこれからもこだわって続けて行けたらいいなと思っています。あ、でもヒゲダン(Official髭男dism)の曲の方がもっと難しいですが(笑)。

撮影 榎本麻美

(#2に続く)

「元彼といた時のワタシも嫌いじゃない」と語り出す女友達が大量発生……1億回再生の代表曲「ベツカノ」を生んだwacci橋口洋平(39)が聞いた“会話”の内容とは? へ続く

2023.03.23(木)
文=「週刊文春」編集部