この記事の連載

  • 心と体を整え直す生まれ変われる宿 #2

 自然や風土の恵みに意匠を凝らした建築、そしてお風呂。私たちの心身をリセットし、整えてくれる宿を紹介します。

 他では決して味わえない最高の宿泊体験を求めて、旅に出ませんか。


歴史ある療養の地に滞在し疲れた身体と心を清めて整う

◆moksa(京都府・八瀬)

 「再生」をコンセプトにした宿。施設があるのは、京都の中心から少し外れた若狭へ続く山道への入り口となる八瀬。平安時代、壬申の乱で背中に矢傷を負った大海人皇子(おおあまのみこ)の傷を癒やすために、村人が献上した“八瀬の蒸風呂”を起源とする、歴史ある療養の地は、比叡山の麓であり、清流高野川のほとりでもある自然豊かな場所です。

 “生まれ変わり”を感じる滞在の柱となるのが“お茶”と“蒸湯”。八瀬の蒸湯文化からインスピレーションを受けた3種の完全予約制プライベートサウナ「蒸庵(ジョウアン)」は、血液を巡らせ、心を緩やかに解放してくれます。また、苔庭を眺める4席のみのお茶カウンター「帰去来」では、薬膳茶・中国茶/台湾茶・日本茶をゆっくりと味わう幸せを享受。

 全31室の客室のバスルームにはヨモギを用いたバスソルトが用意されているのも嬉しいサービスです。

 「moksa」とは、解説や解放を意味する梵語(サンスクリット語)なのだとか。豊かな自然に抱かれて“生まれ変わり”を感じてみてはいかがでしょう。

 エントランスホールには、陶芸家・廣谷ゆかり氏の蓑(みの)を用いた円の立体作品と陶芸家・清水志郎氏の作品を展示。館内には八瀬の独自性をテーマにした、さまざまな現代作家の作品がしつらえられ楽しませてくれます。

 体内のコラーゲンを活性化させる特殊な光を用いたミストサウナ「美蒸」。ほかに炭化した薪をイメージした「炭蒸」、比叡山にも多く自生する檜をテーマにした「檜蒸」があります。プロデュースは、サウナの聖地とも言われる「サウナしきじ」の笹野美紀恵氏。水風呂には比叡山の地下水を使用しています。

 朝食は、和食・洋食・養生朝食から選べます。写真の養生朝食は、おかゆに湯葉と柚子のあんをかけた胃腸に優しく身体がととのう朝食です。八瀬の大原女(おはらめ)(※)文化から着想し、薪火料理を中心としたレストラン「MALA(マーラ)」では、エグゼクティブシェフの宍倉宏生氏が、大原や京都近郊の旬の食材を調理して提供。薪火を囲むライブ感溢れるカウンターが心地よいレストラン。

※平安時代中期、大原で採れた柴や薪、農産物などを頭に乗せて京の町で売り歩いた女性たち。

moksa

所在地 京都府京都市左京区上高野東山65
電話番号 075-744-1001
料金 1泊2名1室利用 38,000円~
アクセス 京都駅より車で約30分、比叡電鉄「八瀬比叡山口駅」より徒歩5分
https://moksa.jp/

2023.03.14(火)
文=齋藤素子