この記事の連載

  • 心と体を整え直す生まれ変われる宿 #2

現代アート、里山から吹く風 そこに“在る”を時間の中で整う

◆直島旅館 ろ霞(香川県・直島)

 世界中からアートファンが訪れる島、直島で日本の伝統的な文化を継承しつつも、新しい文化価値を創造し発信していく場となることを目指す「直島旅館 ろ霞」。京都芸術大学教授でアートプロデューサーの後藤繁雄のキュレーションにより、館内では名和晃平氏、横田大輔氏、品川亮氏などの作品を堪能することができます。そして、周辺地域に存在するマテリアルを使い作家や職人が作り上げた土壁、襖戸、飛び石などの設えも滞在を心地よいものにしてくれます。

 「山紫水明」の考えをベースに現代的な要素を加味し、「山祉水明(さんしすいめい)」と名付けられた庭園には、神の恵みの象徴として水田が設けられています。夜間には光の演出が施されてその表情を変え、夜間だけ見られるアート作品も現れるという演出も見事。

 また、レストラン棟と宿泊棟の間には宿泊者同士がアートや旅や人生などについて自由に語り合える場として囲炉裏が設けられ、旅人同士の交流が自然と生まれる宿という側面も。「レストランEN」では、瀬戸内の食材を使った3つのコース料理を提供。瀬戸内の食材を現代的な和食で表現しています。

 島特有ののんびりと流れる時間に身を委ね、ただそこに“在る”を愉しむ宿です。

 料理のコンセプトは「五味一風」。京料理経験を持つ牧嶋優治料理長により、瀬戸内の食材を使って、五味と香り、甘み、彩りを巧みに操り味の陰陽を繰り返す、独特の現代和食が楽しめます。瀬戸内=食いうイメージを再認識するはず。瀬戸内の魚介、シャリに香川産のおいで米と赤酢を使う寿司会席コースも秀逸。

 レストラン棟と宿泊棟の間にある囲炉裏「無量楽庵」でもアルコールドリンクやお茶を楽しめます。夜は焚き火を囲んで旅人同士の会話が生まれる場所に。

 長屋状に並ぶ平屋の客室は全11室。里山からの風が心地よい、「ろ霞」が考える現代の和=調和の在り方が表現された空間。写真は「ろ霞スイート」。

直島旅館 ろ霞

所在地 香川県香川郡直島町1234
電話番号 087-899-2356
料金 1泊2名1室利用 1名42,000円~

アクセス 宮浦港から車で8分(無料送迎車あり)
https://roka.voyage/

2023.03.14(火)
文=齋藤素子