それに、ジェンダーについての議論が、年1回、3時間の番組にこんなに左右されんでもよくない?って。
西澤 たしかに。
加納 なんで女芸人だけ揉めなあかんねん、って思ってきて。ガールズバンドナンバーワンもあっていいし。女性芥川賞なんか作って、揉めたらええし。
そういう意味では、その渦中にいて、時世にちゃんと身をゆだねられる女性芸人はピュアやなって思いますよ。
THE Wの、独特すぎる美学
西澤 そもそも、THE Wは漫才もコントもピンの方も一緒くたにやるっていう、すごい難しいことをやってますよね。今年、コントが多かったじゃないですか。
加納 そうですね。漫才が勝ててない。
西澤 どの大会でもその傾向はあるのかもしれないですけど、しゃべりで面白いことをしようとする女性はまだ拒否感を持たれる傾向はあるのかな、とは思いました。一個キャラがあったり、役があったりしたほうが、まだ視聴者も安心して見れる人が多いのかな、と。あと、オチ前にちょっとエモいシーンを入れると、共感を生みやすい傾向も。
加納 それで言うと、紅しょうがが2本目は漫才衣装で終わりたかったと話していたのは、かっこいいなと思いましたけどね。
西澤 かっこいい。
加納 でも、あの大会ってそういう美学とか無視してくるんですよ。だって、(採点の票が)蝶々ですよ。番組として楽しんでるのに、その1票が蝶々に変わるんですよ。うちらだけじゃない、女が全員イジられてるよ。みんな怒ったほうがいい。
西澤 (笑)。
加納 ただ、これって、たとえば男の楽屋に肉しか置いてなかったらイジるじゃないですか。その延長なだけで。ジェンダーのことだけメチャクチャシリアスに「おかしいと思います」って言ってると思わんといて、っていうか。
西澤 そうですよね。でも、これがテキストになると、シリアスに怒ってるみたいになっちゃう。
加納 そう。「Aマッソ加納、蝶々に怒る」みたいなタイトルの記事になる。
2023.02.24(金)
文=「文春オンライン」編集部
撮影=末永裕樹/文藝春秋