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自然をリスペクトし、共存する、仙台暮らしと野菜のおいしさ

 「アクアイグニス仙台」のマルシェやレストランでご当地の食にふれ、仙台ってどんなところなんだろうと興味がわいてきました。そこで、2021年から仙台で活動している菜園料理家の藤田承紀さんに、お話を伺いました。

 自宅の周りはみわたすかぎりの水田風景で、畑を囲むようにきれいな小川が流れています。「小川には山の水が流れてきているんですよ。泉ヶ岳のふもとである仙台市泉区に住んでいますが、この辺りはとてもいいお米がとれるんです。仙台に移住する前は千葉でも米を育てたことがありますが、申し訳ないけれど仙台の米の方が圧倒的においしくて、驚きました。粒立ちがよく、あっさりしているけれど雑味がないから食べ飽きないんです。水のよさが味に大きく影響しているんじゃないかな」

「仙台のレストランは産地から近いというメリットだけではなく、野菜や米を扱う人のポテンシャルが高い! と感じます。いい野菜を扱うのが当たり前という文化が根付いているので、普通の居酒屋でも野菜や魚介が本当においしい。東京と比べて人が少ないので、レストランもすいていてゆったり食事を楽しめるのもいいですね」

 アトリエでいろいろなモノ作りにチャレンジしている藤田さんにとって、食以外のよさもあると力説します。「旋盤など工具を置く場所も余裕があるし、材料となる材木もまわりにたくさんある。都心のように作業の音を気にすることもありません。何かやりたいことを具現化するのには、断然地方がいいと感じています。特に仙台は都市と自然とのバランスがよく、車で10分も走れば都心と自然を行き来できるので、東京から移住してきてもすぐなじめました。仙台の人はとてもやさしくてあったかい気質。自然に敬意を払い、共存する姿勢は、北欧に似ているようにも感じます」

菜園料理家・藤田承紀

イタリアでの修行後、野菜作りをしながら料理家として活動。アメリカ大使館内のスージー大使夫人の菜園管理人を3年間務めるなど関東で活躍後、2021年より仙台に移住し、「農と手仕事」を軸にした生活をスタート。料理教室やケータリングのほか、avexダンスインストラクターとしてレッスンや振付、真鍮作家として店舗での販売やワークショップを行っている。著書に主婦と生活社『野菜のスープ』、文化出版局『野菜のチップス 果実のチップス』。
http://fujitayoshiki.com/

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