![緑がかった温泉で、冬は白濁することもある「長生の湯」。冷えた冬の空気と硫黄の香りが、温泉好きの心をくすぐります。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/b/1280wm/img_eb3b0f6fbfe90349a22b943ea2d185c7115443.jpg)
第3回目は三百有余年の歴史を持ち、名湯として名高い鳴子温泉郷へ。心と体を芯からときほぐす「名湯秘湯 うなぎ湯の宿 琢ひで」で温泉三昧のリトリート。
仙台港直送の魚介や郷土の味など、宮城の旬と山海の恵みを味わう料理も必見です。
“うなぎの湯”の異名を持つとろとろの強アルカリ泉は、もはや美容液!?
![本館から離れた別棟に位置する「鶴の湯」と「亀の湯」は、ちょっとした小道を歩いて向かいます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/d/1280wm/img_cd349aac4eed336975be5a7fbb9f92a9107492.jpg)
![「亀の湯」と「鶴の湯」は日替わりで男女入れ替え制。どの湯からめぐるか、しっかり計画を立てて全湯を制覇したい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/1280wm/img_3f14029249cae09ecdf90f392049ea18107603.jpg)
鳴子温泉郷にある源泉の数はなんと400本近く。日本にある11の泉質(旧泉質)のうち、8種類が集まっているという温泉の宝庫なのです。「名湯秘湯 うなぎ湯の宿 琢ひで」は鳴子温泉郷の中で最も湯量が豊富なエリアに位置し、宿の温泉はすべて自家源泉のかけ流し。湯舟は常に湧き立てのフレッシュな湯で満たされています。
誰もが入れる湯舟は7つ。見晴らしのいい「長生の湯」、本館から離れた静寂の中にある「鶴の湯」と「亀の湯」、一枚岩の石をくりぬいた内風呂と露天の桶風呂が楽しめる「芍薬の湯」など。湯ざわりも景色も異なる湯舟が揃うので、館内で湯めぐりしているような気分が味わえます。
「長生の湯」の露天の岩風呂は混浴ですが、脱衣所からすぐの内湯は男女別になっていて、女性内湯近くの露天風呂は男性側からは見えにくい造り。客室数をしぼっているので湯舟が混みあうことはあまりなく、深夜はほぼ貸し切り状態になので混浴にもぜひチャレンジしてみてください。
![檜の木枠で造られた六角形の湯舟の「亀の湯」。本館から離れているので、鳥の声や山の気配を感じながら温泉にひたれます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/f/1280wm/img_4fa887cdd5c78fcfc08ebbfa353cb568131807.jpg)
![「鶴の湯」は木造の屋根が付いた岩風呂。「亀の湯」と同様に、pH値は驚異の9.4!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/b/1280wm/img_fb582c91342d1a523dfa80d00952bc57126739.jpg)
温泉に身をひたせば、とろりとやわらかな湯が体を包み込み、硫黄の香りが温泉への期待値を高めてくれます。泉質は強アルカリ性の硫黄泉で、皮脂や老廃物を溶かしてツルツルにする美肌の湯。
館内で最もpH値の高い「亀の湯」と「鶴の湯」は、湯の中で体をなでると、とぅるーっと手がすべります。とろとろを通り越して、ぬるぬると感じるほど。化粧水のような湯とよく聞きますが、これはもはや美容液の領域です。
静かに目をつむり全身を湯にゆだねれば、まるで羊水の中でたゆたっているような安心感と心地よさに満たされます。湯の中に体が溶けて消えていくような気さえしてくる不思議な感覚。湯上りの肌も感動的なほどしっとりツヤツヤ。温泉に入り慣れた人でも驚くとろんとした湯、なるほどこれが“うなぎ湯”と呼ばれるゆえんかと頷けます。
![敷地内の自家源泉の湯けむりがもうもうと立ち上ぼり、あたりいっぱいが硫黄の香りに包まれます。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/b/1280wm/img_5b3b07fd04a0857650d6eb5b956753df209424.jpg)
2023.02.18(土)
文=嶺月香里
撮影=橋本 篤