熱量を活かした取り組み

 小浜温泉ではこの日本一の熱量を誇る温泉を活かし、いろいろと取り組みが行われています。

 なかでも興味深いのが、未利用の温泉を活かした塩づくり。

 もともと戦中から戦後復興期にかけて、製塩業が盛んだったという小浜温泉。一度は消えてしまった塩づくりの火を12年ほど前から復活させているのが、「雲仙エコロ塩」の木村建洋さんです。

 木村さんの塩は3タイプ。橘湾から採取した海水、塩分を含む小浜温泉の源泉、そしてこの2つをブレンドしたもの。それぞれ水分を蒸発させる際に源泉を使用し、塩が結晶化したら天日で乾燥させます。

 橘湾には雲仙岳の伏流水が流れ込むため、塩分濃度がやや低めの2%。温泉水は0.2%。それを1時間かけて1%ずつ、塩分濃度をあげていきます。そして海水や温泉水を継ぎ足しながら、1週間かけて結晶化させるのです。ゆっくり蒸発させるので、塩は雪のような細かさ。

 通常、水分を蒸発させる作業には重油や薪を使います。すると、どうしても二酸化炭素が排出されてしまう。加工食品の中でも塩はダントツに二酸化炭素を誘発発生してしまうのだとか。

 その点、雲仙エコロ塩は100度近い温泉水を使用するため、二酸化炭素を生み出す燃料は不使用。海へそのまま廃棄されるはずだった未利用の温泉を有効活用しています。しかも市へ支払う温泉使用料は一般燃料に比べごくわずか。塩の年間生産量は1トンというから、環境面でも、コスト面でもやさしい製塩法といえそうです(とはいえ、製造やメンテナンスの労働量は多いはずですが)。

 通常の塩に加えて、人気があるのが、塩分濃度20%の液体の塩、「調味液体の塩」。かつて木村さんが長崎市内で寿司屋を営んでいた経験から生まれたそうです。塩は結晶が溶けるまでには時間がかかるけれど、これならスパンと味が決まります。

 これを使うといつもの刺身がグンと格上げされるとか。マグロやサーモンのサクをボウルに入れて、液体の塩にくぐらせ、ラップに包んで冷蔵庫に保存。すると身がしまり、時間が経過するにつれて脂が刺身全体に回り、熟成していくそう。早速、ためしてみます!

2023.02.11(土)
文・撮影=古関千恵子