#251 Iki
壱岐その2(長崎県)
福岡県と対馬の間、玄界灘に浮かぶ島、壱岐。
南北約17キロ、東西約15キロ、100メートルを超すような高地は少なく、島でありながら、長崎県で2番目の面積を誇る平野、深江田原(ふかえたばる)が広がっています。
島では十字に幹線道路が走り、どこからでも大体20分あれば、目的地に到着できます。そしてざっくり言えば、北西から時計回りに勝本エリア、芦部エリア、石田・原の辻エリア、郷ノ浦エリアの、4つのエリアに分かれます。
中心地は郷ノ浦、移住組などのおしゃれなカフェが増えている芦辺など、エリアごとに雰囲気や見どころが異なるのが興味深いところ。かつては言葉も異なっていたとか。
北西の勝本エリアは、港にずらりと漁船が停泊する、古くから漁業で栄えた町です。かつては古式捕鯨で対馬、五島、平戸と並び称されるほど隆盛を極めたとか。中でも“鯨組(鯨漁の集団)”で富を築いた土肥(どい)家は、鴻池、三井と肩を並べるほどの、“日本の三大富豪”と呼ばれていたそうです。
一本内陸に入った細い路地を歩くと、古民家が軒を連ね、ノスタルジックな風情が漂います。その一角に古民家をリノベーションしたレストランや宿、そして壱岐で唯一のクラフトビール醸造所「アイランドブルワリー」があります。
アイランドブルワリー代表の原田知征さんは、実は麦焼酎の老舗、原田酒造の5代目。地域活性化のために築130年以上の酒蔵を改装し、2021年にクラフトビール醸造所&タップルームを開業しました。
原田さんが目指しているのは、“魚に合うビール”。そこで目を付けたのが、麦焼酎に使われている白麴です。白麴による柑橘系のような爽やかな酸味と、フルーティーなホップの華やかな香りのビールは、魚料理と相性ぴったり。そして季節ごとに、島でとれた柚子やこだわりのバナ貝、真珠貝などを素材にした個性的なフレーバーも。フードメニューには漁港ならではの、フィッシュ&ポテトや丸ゆでにしたイカリングなどが並びます。
2022.07.02(土)
文・撮影=古関千恵子