寒い冬。起きられない、気が滅入る、やる気が出ない、わけもなく悲しい。そんな状態が冬の間だけ続くのなら、それはもしかしたら“ウィンターブルー”、「冬季うつ」かもしれません。
冬のどうしようもない不調。実は、「冬季うつ」の可能性がある。
「10~11月頃から冬にかけてうつ状態になり、春から夏には症状が軽快するのが、『冬季うつ』と呼ばれる季節性感情障害です」と精神科医の立川秀樹先生。
冬季うつの症状は、憂鬱、悲哀感、意欲の低下、日中や夕方の眠気、睡眠時間の延長(朝起きられない)、過食、体重増加など。一番の原因は、日照時間の短縮だ。
「冬季うつの患者さんは日照時間の短縮でメラトニン分泌のタイミングが遅れることがうつ状態を引き起こすと考えられます。子ども時代から傾向がある場合が多く、社会人になって朝起きられず仕事に遅刻するなどの問題が出てから受診される方が多いようです」
冬季うつでPMSも悪化!?
冬季うつは特に20代後半以降の女性に多く、連動してPMS(月経前症候群)、PMDD(月経前不快気分障害)の症状が強くなる例も少なくないという。
「人は誰でも、多かれ少なかれ変化にストレスを感じます。冬季には日照時間が短くなり、気温も低くなる。そして女性は1カ月周期でホルモンが変動します。日照時間の変化、気温の変化、ホルモンの変化と、女性にはトリプルパンチ。もともとPMSがある人はホルモンの変化の影響を受けやすいわけで、冬季うつと合算する形で症状が出やすい傾向があります」
この冬季うつが、うつ病に移行してしまうことはあるのだろうか。
「通常の冬季うつは、春になると治ります。症状が重い場合、それに対するストレスでうつ病を発症する可能性はありますが、あくまでも冬季うつは季節性のもの。2月に入った頃から、だんだんよくなっていきますよ」
春になっても改善せず症状が続く場合は、冬季うつではないので、専門家に相談しよう。
「冬季うつとは、うまく折り合いをつけられるといいですね。冬の間は、仕事や家事で完璧を目指そうとしないことです。過眠、過食、疲労感、意欲の低下などがあったとしても、『まあ、毎年冬は不調だから』と考えられるレベルなら、受診の必要はありません」
完璧を目指さず、ほどほどの日常生活が送れるならば大丈夫。
「日常生活に支障が出て、強く悩んでしまうのなら、受診を勧めます。また、気分変動性がなくなる、つまり、楽しいはずの出来事にもまったく楽しさを感じることができない状態が2週間続く場合も、受診をお勧めします」
冬季うつの治療にはまず「高照度光療法」が用いられる。
「早朝に高照度の光を浴びることで、メラトニン分泌が抑制され、結果、夕方以降のメラトニン分泌のタイミングが早まることで生体リズムが矯正され、うつ症状が改善すると考えられます。光療法は効果が高く、副作用もありません。医療機関に光療法の機器がありますが、まずは朝の太陽が一番です」
2023.02.12(日)
Illustrations=Haruhi Takei
Photographs=iStock