「ごちそうさまでした! また来ます!」
パーラーアコを出た頃には、私の影は夕日に照らされ随分と伸びていた。
唯一無二の風景が見られる商店街
小松の駅前には新しく観光客を迎える準備ばかりが進んでいるのかと思ったが、少し歩けば県内唯一である道幅の広いアーケード、ぬか漬けが香る老舗で買う珍味、いい音のジャズが流れ元気なマスターがいる喫茶店、さらには創業90年以上経つ城の形のおもちゃ・人形販売店、絵画がたくさん飾られた美しいティールーム、店の文字がかわいい毛糸屋さん、アーケードを抜け振り返ると、大きなファサードには笑顔の太陽が描かれている……。
どれも小松を彩るために欠かせないもので、どれも小松に来なければ見ることができない唯一無二の風景ばかりだった。これこそが私が見たかった旅情なのではないか。
住む人々にとっては当たり前の日常だが、私にとっては非日常の特別なまちである。ひとつの地方都市と言ってしまえばそれまでだが、じっくり歩けばおもしろい発見の連続で、歩いていると探究心と愛着がわいてくる。いつかまた、今度は祭りの季節に訪れたい、そのときは新幹線に乗って。
2023.01.08(日)
文=あさみん