――YouTubeでの作画テクニック講座もとても明解で参考になるので、頼りにしたいと思ったんでしょうね。

アッツー ありがたいことです。昨年『アンサングヒーロー』(原作:うらたにみずき)で連載デビューした鯛噛(たいがみ)くんは、僕のYouTubeの漫画家志望の新人を育てる企画からデビューした子なんです。それで僕も背景作画を手伝いながら応援しました。めちゃくちゃ絵が上手い子なので、これからの活躍が楽しみです。

マンガの背景に込められた意味や意図をアッツーさんに聞いてみよう

――主にどういうアドバイスをしているんですか?

アッツー とにかく全体のバランスを見ることですね。漫画ってコマの集合体じゃないですか? だけど最初のうちはコマでしか絵を考えられないんです。なのでページ全体で見た時にバランスのブレがないか──左側を描き過ぎているから、右側をもうちょっと描き込もうっていうのはよく言います。

 この方が読みやすさが変わるんだよって。もっとマニアックなことを言うと、吹き出しがあって、キャラクターがあって、背景があるとすると、吹き出しも絵なんです。そこに平仮名で描いてあるか漢字で描いてあるかでページ全体の密度が変わってくるので、僕はそのバランスまで見て背景を入れています。

――すごいですね。これまでアッツーさんが背景を描かれてきた作品はジャンルも様々ですが、現代ものとファンタジーではどちらが描きやすいですか?

アッツー こればっかりは好みだと思うんです。現代ものは建物に直線が多いから定規を使わないといけないんですけど、それが僕は面倒くさいんです。対してファンタジー系は自然の風景が多いぶんフリーハンドで描けるのでペン入れが楽なんです。その差です。

 どちらの絵が大変ってことは特になくて、ただ定規を持ちたくないだけという(笑)。定規を使うとボタ落ちといって流れたインクで原稿を汚しがちになるんです。フリーハンドで描いてるとその心配もないので単純に気が楽です。でも、新人は逆になると思うんです。定規を使うと透視図法といって点を使ってパースが取れるぶん正解が見えやすいので描きやすいんです。

 自然の風景はそれが見えづらいことが多いので、画力がある程度高くないと描けない。僕はだいたい感覚で描けちゃうので、アタリだけで直接ペンを入れてます。ちょうど今進めている原稿があるので、ご覧になりますか?

――ぜひお願いします。(#2に続く)

「AIやデジタルはヒトと置き換わるのか」『DEATH NOTE』などの背景を描く“コミック職人”が即答した答えは? へ続く

2022.11.29(火)
文=秦野 邦彦