世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として登録されている、和歌山県の「熊野古道」と「高野参詣道」。パワースポットとしても知られる参詣道を歩き、聖地を巡ることで、人生観が変わるかもしれません。

 そんな参詣道巡りを、CREAアンバサダーの佐藤由樹さんが、登山地図GPSアプリ「YAMAP(ヤマップ)」を使いながら体験。初めての参詣道ウォーキングに頼もしいYAMAPの活用法と、この2つの道の魅力を紹介してもらいました。


紀伊山地の山岳霊場を巡る、歴史ある参詣道

 太平洋に張り出した紀伊半島の大部分を占める紀伊山地。標高1,000~2,000メートル級の山が連なり、多雨が育む森林や滝など、豊かな自然に恵まれた山岳エリアです。

 紀伊山地は古代より神域とされ、神秘的なパワーを得るための修行の場でした。そして生まれたのが、「山岳霊場」とそこに至る「参詣道(巡礼の道)」。

 なかでも熊野古道と高野参詣道は、古代から多くの人が祈りを抱きながら歩いた道です。

 山中も通るこれらの道を歩くには、和歌山県が発行している紙地図「和歌山県街道マップ」があるととても便利。さらに、登山地図GPSアプリ・YAMAPもあるとより安心です。YAMAPでは、電波の届かない山の中でもアプリ上で地図を見たり、現在地を確認したり、スポット情報の確認ができます。

 街道マップと併用して、安全に楽しく歩きましょう!

自然崇拝の聖地を巡る、熊野古道

 熊野古道は、「熊野三山」といわれる「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社・那智山青岸渡寺」と京都をつなぐ、総距離1,000キロメートルにおよぶ参詣道。自然崇拝を起源に信仰を集めた熊野三山。秘境の地・熊野は「黄泉(死後)の国」と通じているとされ、ここに詣でることは新たな自分によみがえることと考えられ、平安時代から多くの参詣者がこの道を歩いてきました。

 さまざまなルートがあるなかで、メインルートとなるのが中辺路(なかへち)。今回は、この中辺路のハイライトとなる「発心門王子(ほっしんもんおうじ)」から熊野本宮大社までの約7キロメートル、約2時間30分のコースを体験してきました。

 まずは、YAMAPのアプリ上でモデルコース「熊野古道 中辺路①(紀伊田辺駅~熊野本宮大社)」をダウンロードして、初の参詣道ウォーキングに出発です!

 このルートの出発点となる発心門王子までは、南紀白浜空港から熊野本宮大社駐車場までレンタカーで約1時間30分、さらに発心門王子まで路線バスやタクシーで約15分で行くことができます。

 発心門王子は五躰王子のひとつにかぞえられる格式高い王子で、熊野本宮大社の神域の入り口とされた場所です。

 王子とは、熊野の御子神(みこがみ)を祀る社のこと。熊野古道には「九十九王子(くじゅうくおうじ)」と形容されるほど多くの王子が設けられ、参詣者の休憩場所ともなりました。

 参詣道ウォーキングを楽しむアイテムとして「押印帳」が用意されています(全4種。中辺路のみ有料)。参詣道沿いに設置されたスタンプを押しながら歩くというもので、全スポットのスタンプを集めた人には和歌山県から踏破証明書が発行されるそうです!

 それでは発心門王子を出発し、まずは「伏拝王子(ふしおがみおうじ)」を目指します。

 伏拝王子までの道中には、「森のベッド」と呼ばれる休憩スポットがあります。間伐した木で作られたベンチがたくさん置かれていて、座ったり寝そべったりしながら、森林浴を満喫できます。

 発心門王子から1時間ほど歩くと、伏拝王子に到着します。

 ここは京の都を出発した参詣者が、ようやく熊野三山巡拝の最初の目的地である熊野本宮大社を遠方に望めた場所であり、感動のあまり「伏して拝んだ」ことが名前の由来とされています。

 現在、熊野本宮大社は小高い場所にありますが、元々熊野川の中洲にありました。明治22年(1889)の大洪水で社殿が倒壊してしまったため、そこから500メートルほど離れた現在の場所に遷座しています。

 旧社地の「大斎原(おおゆのはら)」には大きな鳥居が立てられ、多くの人が訪れる人気のパワースポットとなっています。

 伏拝王子のすぐ横には、「伏拝茶屋」という山小屋風の休憩所があります。ベンチやテーブルが備えられているので、お昼休憩におすすめ。

 昼食にいただいたのは「温泉民宿 大村屋」の熊野古道弁当。熊野地域の郷土料理であるめはりずしや山菜おこわ、稲荷ずし、赤飯の4つのおにぎりと総菜を詰め合わせた、手作りのお弁当です。数が多い場合は、和歌山県世界遺産センターなどに宅配してもらうこともできます。

温泉民宿 大村屋

所在地 和歌山県田辺市本宮町川湯1406-1 
電話番号 0735-42-1066

 さて、熊野本宮大社への道のりはあと半分。「ちょっとよりみち展望台」からは、大斎原の大鳥居や山々が望めます。

 ここで気を抜かず、YAMAPで現在地をしっかりと確認しながらゴールを目指します。

2022.12.15(木)
文=佐藤由樹
撮影=佐藤 亘