渡辺 あらゆるシステムや制度というものは、人が作るもので、たいへん理路整然として合理的なものだと思うんです。ただ、あいにく私たち人間側は、なかなかそこに収まりにくい形をしています。

 それは「歪み」とも言えるし、「奥行き」とも言えるし、あるいは「豊かさ」とも言える。そこでいろんな不都合が起きてくるんですが、さて、その「不都合」をどうするのかということを、その都度考えて、そして考え続けていくことが、大事なんだと思います。

 私にできるのはせいぜい、問題がどういうことなのかということを、解きほぐしてお伝えするまで。「じゃあ、どうしたらいいのか」という答えは、私にはまったくわかりません。ただ、私よりそういうことにお詳しい方や、頭のいい方たちが、こういう問題を前向きに考えてくださるきっかけになればいいなと。毎回、どの作品でも同じなんですが、そういう気持ちで書いています。

※『新潮45』2014年5月号「渡辺あや×小川真司 対談 カッコいい『大人の男』はどこへ消えた」より

写真撮影=山元茂樹/文藝春秋

2022.11.14(月)
文=佐野華英