「ギャルカルチャー」は海外の日本ファンからも人気

昨年、山口氏が遭遇した米国のきゃりーファン(テキサス州オースティンで行われたコンベンション「SXSW」の会場にて)

山口 海外を市場として見られるようになりましたね。毎年、7月にパリで行われるJAPAN EXPOは、20万人近くの欧州の「Jファン」を集めます。近年になって、日本のメディアでも採り上げられるようになりましたが、元々は、フランス人のJ好きオタクによる「コミケ」みたいなイベントで、日本のエンタメ業界と無関係に広まっていました。

伊藤 20万人ってすごいですよね。元々は「コミケ」みたいって言いましたが、今はどんな感じになっているんですか?

山口 主催者がプロではないのが特徴ですね。あらゆる分野がごった煮になっています。アニメ、コミックの貢献が非常に大きいのですが、近年は、コスメやファッションを中心に「ギャルカルチャー」が、海外の日本ファンから人気でした。妙に長いツケマツゲとか僕らには理解しにくいけれど、ティーンに人気のギャルメイクは、海外のJ-ファンからも人気なんですよ。

伊藤 そうなんですねぇ~。そーいえば、きゃりーも人気読モ出身だし、「つけまつける」って曲もありましたもんね。

山口 そうですね。ファッション雑誌の読者モデルをいつしか「読モ」と呼ぶようになって、ティーンの憧れになりましたね。彼女が所属しているアソビシステムという会社は、元はクラブイベントのオーガナイザーをやっていました。中川社長も随分前から知っていますが、新木場STUDIO COASTでの「美容師ナイト」とか、東京で一番人気のクラブイベントを企画していた会社でした。DJとして中田ヤスタカさんもレギュラー的に出演してましたね。

伊藤 なるほどねー。そういう流れがあり、うまいこと時代にハマっているんですね。

山口 原宿ファッションとクラブカルチャーと音楽といろんなものを融合させて、まさしく、時代と合致したという感じですね。日本の10代と、海外の日本ファンが、同じ視点を持っているような印象があって、そこが面白いなと思っています。こだわりがないところが似ています。

伊藤 こだわりがないところ……ですか。“NOこだわり”をクリエイティブに結びつけることは難しい感じがしますよね。いまの10代は本能的にそれをやってのけるのか? それとも大人が“NOこだわり風”を作っているのか(笑)? 僕は、「PONPONPON」の歌詞が気になっていたこととも繋がりがあるって言えばあるんですけど、今回の“もったいない”ってワードが個人的に無視できないんですよ。

「MOTTAINAI」という日本の感覚にもっと誇りを!

山口 「もったいない」も海外で注目されている日本語だし、日本的な概念ですよね?

伊藤 何年か前に、アフリカ人女性として初めてノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイさんという人が、日本語の「MOTTAINAI」を、環境を守る国際語として提唱したって話がありましたよね。それを聞いたとき、日本から遥か遠いアフリカに住む女性が、「MOTTAINAI」は3R(Reduce、Reuse、Recycle)を一言で表す言葉だと言って、次世代へのメッセージにしようとした、そのバイタリティーとセンスに感動したんですよ。

山口 日本的な感覚がグローバルに支持されるという例ですよね。よく感じるのが、日本人って「海外ってアメリカのこと、アジアって中国のこと」って無意識に捉えている気がするんですよ。

伊藤 ですね。

山口 実際は米国人と中国人のセンスって、むしろ特殊で、政治や軍事ではパワーがあるかもしれないけれど、文化的に尊敬されているとは言い難い。一方で、海外で活動していると、世界の多くの国の人々から、日本人の気遣いとか精緻な感覚はすごく評価されていると感じるんですよ。日本のマスメディアも日本人が嫌われた話は鬼の首をとったように報道するけれど、日本人のコモンセンスが国際的に好かれるとはなかなか伝えてくれないなと、残念に思います。

伊藤 日本人には“自慢をしない”美学がありますからね。けれど、僕ら日本人はもっと自分たちの感覚に誇りを持ったほうがいいと思うんですよ。そー思って、むかし「MOTTAINAI」と言う曲を詞先で作った覚えがあります。たしか、どこかのメーカーのディレクターにプレゼンしたけど、陽の目をみることはなかった(笑)。

山口 日本の市場だけで考えると、ウケるかどうかは、微妙だしね。そのディレクターの気持ちもわかります(笑)。

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2013.10.24(木)