音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、2013年11月にリリースされる中から、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【2013年11月に流行る曲】
きゃりーぱみゅぱみゅ「もったいないとらんど」

多くの人が口ずさむ理想的なテレビCMタイアップ

山口  miwa、黒木渚ときて、今月はきゃりーぱみゅぱみゅですか?

伊藤  はい、女性シンガー3連発になっちゃいました。曲タイトルは「もったいないとらんど」、すでに10月の上旬くらいからauのテレビCMで「もったいないから もったいないから」とサビ部分がヘビロテしているので、既にきゃりーぱみゅぱみゅ的サビ中毒(笑)。

山口 すごい出稿量ありましたね。楽曲をリリースする時には、既に曲のサビ部分を多くの人が口ずさんでいるという、理想的なテレビCMタイアップになっていると思います。

伊藤 随分まえからauのテレビCMでは“もったいないおばけ”というキーワードも出ていたのでタイアップ感の強い楽曲だなぁ~と言う印象があったし、きゃりーぱみゅぱみゅと言えば“時のアーティスト”なので、正直なところ「ちょっとオレはいいかなぁ~」って避けてしまう自分もいたんですよねぇ。

山口 まあ、圧倒的に露出するという「力業」で押し切るというのも、一つの勝ち方ですね。でも、クリエイティブな分析をする対象にはしにくいですよね。

伊藤 まーそうなんですが、デビュー当時の曲「PONPONPON」の中で「POIPOI 捨てる悪い子はだれ?」って詞はかなり刺さりましたね。それに彼女の場合、音楽だけではなく、カルチャーの一部のようなもので、その存在が海外にも認知されているようですからね。

日本をテーマにしたフェスは世界に100以上存在!

山口 それでは、今回は、グローバル視点でのJポップの話をしましょう! 「クールジャパン」という言葉は、いささかクタビレタ言葉になってしまっていますけれど、世界中に、日本ポップカルチャーのファンがいるのは事実です。

伊藤 ですよね。僕もあるアーティストの海外デビューを手掛けた時に、その多さに驚きました。

山口 海外向けに日本のアーティストの公式情報を発信するSYNC MUSIC JAPANというサイトがあります。海外のフェスティバルオーガナイザーやニュースサイトの窓口になっているのですが、そのSYNC MUSIC JAPANによると、日本をテーマにしたフェスティバルが世界中に100以上はあるそうです。

伊藤 そんなに!

山口 数千人から数万人が集まるそうですよ。NHKの国際放送が、海外向けに日本のポップスを紹介している「J-MELO」という番組にも世界中からファンメールが届くそうです。そんな中で、きゃりーぱみゅぱみゅに代表される「原宿カルチャー」は、強い支持をされています。彼女のニューヨーク公演も大成功だったと聞いています。以前は、日本のファンが買うのが中心で、そういったニュースでアーティストイメージに箔をつけるというのが、海外活動のパターンでしたが、そのパターンは、宇多田ヒカルのUSでのアルバムリリースが最後だった気がします。近年は、本当に現地国のファンがチケットを買って、コンサートに来るようになっています。昨年は、L’Arc~en~Cielが、大規模な世界ツアーを成功させましたし、Perfumeのロンドン公演もソールドアウトだったそうです。

伊藤 音楽業界でも、ようやく本当の意味での世界進出が始まったってことですね。

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2013.10.24(木)