納得して不安なくピルを飲むためにも初診は対面で

 ピルは長期服用する人も多いので、かかりつけ医をもって、上手に付き合いたい。最近では、低用量ピルのオンライン処方も増えてきたが、「体質や症状に合う最適なピルを処方するためにも、初診は対面で受診し、オンラインは2回目以降に利用されることを私はおすすめしたいです」と高橋先生。

「お産がメインのところより、生理などの相談にのってくれる婦人科やレディースクリニックのほうが、ピルの知識も豊富で取り扱う種類も多い傾向にあります」

 ピルはいわば、“ライフデザインドラッグ”だという。

「女性の生き方をデザインできる薬ですね。生理をポジティブに受け入れている方にまでピルを押し付けることはしません。でも、生理にまつわる辛さを我慢しているのなら、一考の価値は大いにあると思いますよ」

女性の生活を左右するのは、つまり卵胞ホルモンと黄体ホルモン

●月経まわりの治療薬としてのピル(低用量ピル)

卵胞ホルモンと黄体ホルモンをごく少量含むのが、低用量ピル。28日間のうち21日間服用、7日間休むというサイクルを繰り返す。1シート21日分(休薬日のための偽薬を含む28日シートもある)に含まれるホルモン量が一定の「1相性」、3段階に分かれる「3相性」がある。1日1錠を服用。脳が“妊娠中”だと認識し排卵を止めるため服用中は妊娠しないが、28日ごとに月経より軽い「消退出血」が起こる。月経困難症・子宮内膜症の治療は保険適用。ジェネリックなら1シート1,000円以下。
*24日間服用して4日間休薬する超低用量ピル「ヤーズ」もある。また、最長で120日間飲み続けられる「ヤーズフレックス」も2017年に登場。月経回数がぐっと少なくなる。

●月経を移動するピル(中用量ピル)

「旅行や試験と月経が重なりそうなのでその1回だけ月経をずらしたい」というときには、卵胞ホルモンと黄体ホルモンを含む中用量ピルが処方される。月経予定日の5日前から、月経を起こしても大丈夫という日まで1日1錠を飲み続ける。服用を止めると約2日後に月経がくる。低用量ピルよりもホルモン量が多いため、吐き気などの副作用が強く出る人も稀にいる。万全を期すなら、予定がある前の月に服用し、月経サイクルを調整するのがおすすめ。保険適用外の自己負担で1回5,000円前後。

●緊急避妊薬としてのピル

別名アフターピル。避妊に失敗したとき、性暴力があったときなどに、性行為から72時間以内に服用することで予定しない妊娠を約80%の確率で回避でき、早く飲むほど避妊の確率は上がる。高用量の黄体ホルモンの単剤で、排卵前の服用では排卵を抑制し、排卵後の服用では子宮内膜への着床をしにくくすることで妊娠を防ぐ。緊急避妊薬としてのピルはすべて保険適用外の自己負担で、1回7,000〜20,000円が目安。

●40代以降は「ミレーナ」の選択も

低用量ピルが適応外の40代以降や経産婦の月経困難症の治療には「ミレーナ」も選択肢のひとつ。T字型の小さな(32×32mm)器具を子宮内に挿入すると、5年間、黄体ホルモンを持続的に放出し効果を発揮。2014年に月経困難症、過多月経で保険適用となり、費用は10,000円前後。避妊目的の場合は自己負担で50,000円~。
*今年から緊急避妊のための使用も可能になった。性行為から120時間以内に挿入する必要がある(その時点から5年間効果が持続)。

(卵胞ホルモン=エストロゲン、黄体ホルモン=プロゲスチン)

高橋先生が監修するピル情報の総合サイト「ピルにゃん」には緊急避妊薬対応の医療機関の検索機能がある。
https://pillnyan.jp/

●お話を聞いたのは……

産婦人科医 高橋幸子(たかはし・さちこ)先生

山形大学医学部卒業後、埼玉医科大学総合医療センター研修医を経て、現在は埼玉医科大学病院産婦人科助教。診療の傍ら、「性教育」の専門家として、小学校~大学でも精力的に講演活動を実施。書籍、TV、webメディアなど各方面で情報発信を行っている。
https://sakko0607.wixsite.com/sakko

Column

私たちの体を守りケアする
フェム・ヘルス研究室

女性の心身の仕組みを理解して、快適に暮らすめための連載。「フェムテック」アイテムの紹介をはじめ、PMS、月経、更年期などの女性のしんどさを和らげて、生活の質を上げる方法を考えます。

2022.11.28(月)
Text=Yuki Imatomi
Illustrations=Haruhi Takei

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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