国産素材を中心に造られた清らかなジン

 ここ数年、注目を浴びている「クラフトジン」。素材選びや製法などにおいて比較的自由度が高く、作り手の個性を楽しめるお酒として親しまれ、国内でも蒸溜所が増えています。そんな国産クラフトジンブームの先駆けと言われているのが2016年に京都で発売されたジンブランド「季の美」。

 魅力を体験するため、「季の美」を造っている「京都蒸溜所」と、その美味しさをじっくり味わえる京都の名バーを巡ってみました。

素材のフレッシュな風味を生かしたジン造り

 「季の美」を手がける「京都蒸溜所」が設立されたのは2014年のこと。東京でウイスキー輸入代理店を営む英国人のデービッド・クロールと角田紀子・クロール夫婦、ウイスキー専門雑誌元編集長のマーチン・ミラーの3人による「日本にジンの新たな歴史を」という思いで始まった。

 拠点となったのは、長年培われてきた文化と技術が息づく京都。2年間の準備期間を経て2016年に「季の美 京都ドライジン」を発売した。

 今回は一般公開されていない蒸溜所を見学させていただけることに。街の中心部から車で15分ほど向かうと、工場が立ち並ぶエリアにあるアトリエのように佇む京都蒸溜所に到着。

 さっそく、清潔感ある蒸溜場に入ると熟成に使われる樽が各所に置かれており、ガイド役の蒸溜担当・遠藤光祐さんが素材について説明してくれた。

「これがジンのベースとなるジュニパーベリーです。松の実の一種なんですが、ちょっとかじってみてください」と手渡され、味見してみると目が覚めるような力強いスパイシーさ。ジュニパーベリーの名前が短縮されてジンと呼ばれるようになったという説があるほど、“ジンの軸となる風味”だと実感する。

 「季の美」の香り、味わいを作るのは11種類のボタニカル。ジュニパーベリーやオリス(アヤメの一種)のほか、京都産の赤松、山椒、木の芽、柚子、生姜、玉露や高品質な国産のレモン、笹、赤紫蘇を丁寧に保存し、風味が失われないように徹底的に管理している。

「毎年、10月末から11月上旬くらいの時期に柚子を収穫するのが、1年で一番大変な仕事でもあります。京都府内の畑で果実を採取した後、ジンで使う皮の部分だけを剥いていきます。ピーラーで剥くと白い部分がついてきてしまうので、包丁で一個ずつ剥いていくという根気がいる作業です」

「これは室町時代から続く宇治の堀井七茗園さんのてん茶です。てん茶とは、抹茶に使われる高級な茶葉のこと。玉露と合わせて特別な配合でブレンドしてもらい『季のTEA 京都ドライジン』という商品に使用しています」

 お茶が入った袋を開けた瞬間にいい香りが立ち上り、京都らしい味わいを想像する。

 奥に進み蒸溜機が並ぶエリアに入ると、室温がぐっと高くなるのを感じる。ジンの原種を沸騰させて蒸気を集めるという最終行程を目の当たりにする。

「ジンの味に欠かせないのが“水”です。「季の美」では、江戸時代創業、伏見の酒蔵『増田徳兵衛商店』さんの仕込み水を加水しています。京都の水は基本的に軟水ですが、こちらの水はやや硬度が高い中硬水の分類に入ります。うちの商品にとっては理想的な水質。週に1、2回伏見まで取りに行っています」

 京都の作り手たちと連携を取りながら手間を惜しまず造られている「季の美」。製造の舞台裏を知るとその魅力がいっそう輝いて見える。

2022.11.09(水)
文=CREA編集部
写真=橋本 篤