エミさんはそんな筆者に、「明日、寺に直接来て。私が紹介するさかい」と約束してくれました。

 翌朝、本屋プラグの嶋田さんを連れてワット・パー・サマナウォン寺院に向かうと、待っていたエミさんが寺院のタイ人僧侶・トムさんを紹介してくれました。「ありがとう」以外の日本語を話せないトムさんは、スマホのグーグル翻訳を使って「関心を持ってくれて嬉しいです」「瞑想はとても大事です」と歓迎の気持ちを伝えてくれました。

 寺院の中ではすでに、中高年のタイ人女性が数人集まっていて、それぞれが持ち寄った食事を用意しています。その後、女性たちは人数分の座布団を用意して、座って瞑想を始めました。

 

僧侶が食事を行っている間、20ページの印刷物を片手にお経を読む

 その様子を見ながら、エミさんが横で説明してくれるので、その女性たちが瞑想しながら何を言っているのか、そして自分たちが何をすべきなのか、理解できました。その後、筆者たちも女性たちと一緒に10分以上の瞑想を行いました。

「今日の現代社会の問題は、人々が考えるのをやめられないこと。何も考えない瞑想を会得することで、苦しみやストレスの問題を解決するのに役立ちます」というのはトムさんの言葉です。

 瞑想が終わると、専用の仏具に水を注ぎながら世の中の悲しい事件に思いを馳せます。その後、僧侶と全員で読経を行いながら、用意した食事をトムさんのお椀によそいます。いわゆる「托鉢」です。さらに、僧侶が食事をしている間、20ページの印刷物を片手にお経を読みます。

「アラハトー サンマー サンブッターサー」「タンマン サラナン カッチャーミー」

 幸い手書きで日本語も書かれていたので、タイ人女性らに「うまいねー」と褒められる程度には読めました。最終ページの少し前まで読んだところで、トムさんが食事を食べ終えます。

タイ本国では味わえない良さが和歌山に

 そしていよいよ、参加者がごはんを食べる番です。床にシートを広げ、用意した食事を並べます。あんかけ料理、焼き魚、揚げた豚皮、肉、ごはんなどがあり、不足時用にサトウのごはんも用意されていました。タイ料理屋ではまず食べられない家庭料理、待望の異国飯です。筆者たちは、タイ人女性達とピクニック気分で食事を楽しみました。

2022.10.31(月)
文=山谷剛史